酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年10月27日(金) 『闇の底』 薬丸岳

 幼い性が弄ばれて殺される。その性犯罪者は同じ過ちを繰り返しがちだと言う。男は手に入れた妻と幼い娘のためにサンソンなる怪物となっていく。幼い子供達が酷い目に遭うたびに、かつての性犯罪者を首を斬って殺すのだ。性犯罪者たちにオマエたちも酷い事をするとこうなるんだぞ、と思い知らすように。かつて自分が置いてきぼりにしたために妹を弄ばれて殺された過去を持つ刑事・長瀬。長瀬は刑事でありながらサンソンに同調する自分を見つけ・・・!?

 んんん〜(困惑)。えっとですね、サンソンの正体がどんでん返しとなるかどうか、そこが読み手と書き手の戦いなのでしょうね。うん。こういう物語というのは正直どう感想を書いていいものやら悩んでしまいます。正直、私はサンソンみたいな存在はありだと感覚的に思っています。だけど・・・そういうリンチ的報復を許してしまえば法治社会は成立しなくなってしまう。そうなるとますます酷い犯罪がはびこるわけで。鶏が先か、卵が先か。犯罪に巻き込まれた被害者と被害者の家族の心の叫び、それってきっと人生が終るまで叫び続けるんだと思います。忘れてしまう事なんてできっこないもの。憎しみは憎しみを呼び、犯罪が連鎖していく。いい人ばかりの世の中ならば、そんな悲しみはなくなる。でも、ありえない。なんとも言えない思いがします。あ、サンソン的存在はありだと思っても、この物語のサンソンを認めるわけではありません。絶対にありえない(怒)。

 あの事件から、自分は出口のない闇にずっと放り込まれていた。

『闇の底』 2006.9.8. 薬丸岳 講談社



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