酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年12月19日(火) |
『モノレールねこ』 加納朋子 |
「シンデレラの城」 スズさんはミノさんと偽装結婚をした。二人とも気侭な独身生活を楽しんでいるのに適齢期を過ぎて尚ひとりものであることに周囲が家族がうるさいから苦肉の策だった。スズさんにはスズさんの、ミノさんにはミノさんの結婚しない本当の理由があった。スズさんは結婚したことで確実に幸せになっていたのだが・・・
加納朋子さんの『モノレールねこ』は本当に素晴らしい短篇集です。慈しむ気持ちで一編一編を大切に丁寧に読ませていただきました。クリスマスの贈物に年末年始の忙しかった自分へのご褒美にいいのではないかしら。ただ甘く優しいだけの物語ではありません。どこかに厳しさや痛みを伴った棘があります。物語なのだから甘くて夢のようなものもいいし、この『モノレールねこ』のように甘さと厳しさが同居したものもいいと思います。どの物語も気に入りましたが、一番心にほろ苦く染み入ったのが「シンデレラの城」でした。ネタバレしないように当り障りなくあらすじを書いてみましたが、加納マジックの巧妙さが際立っている作品です。人はひとりで生きていけるケレドモ、誰かと一緒に生きていきたい生き物なのだと思うのですね・・・しみじみと切々と。もうひとつザリガニを主ザリガニ公に据えた「バルタン最期の日」も泣けます。それじゃ、アバヨ。サヨナラだ。(byバルタン) オススメです。
たかだか婚姻届一枚で誰かを手に入れられると考えている人間が、こんなにも多いという現実が、私には滑稽で、そして不思議でならない。
『モノレールねこ』 2006.11.30. 加納朋子 文藝春秋
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