ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ

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2002年04月20日(土) アーサーラッカムラッカは塗らぬ



 君が、恋文をくれた。
 あたしはうざったくてしょうがなく、ゴミ箱へ捨ててしまおうかと思った。
 けれど、なんとなく、なんとなく、忍びない気持ちになってしまった。
 間抜けな音を立てて、チャイムが鳴り、わたしの部屋にリョウが入ってきた。
「やあ」なんて言って、ベッドの上に座る。手にバスケットを持っている。
「なにそれ?」
 リョウがバスケットをあける。其処には艶やかな赤の苺が新入生のようにきっちりと並び、脇には牛の絵が書いてある、見るだけで口の中が甘くなるようなコンデンスミルクが入っていた。
「食べよ」


 ひやりと冷たく、コンデンスミルクの甘味。どろりととけて、残る苺の酸味。香る、太陽。
 わたしたちは夢中で食べた。
 と。
 リョウが訊いた。
「なに、それ」
 先ほどの手紙だ。
「高木がさ、くれたの。読んでもいない」
 へぇ、と、リョウが言った。はっきりと口に出して。突然、すごく残酷な目になり、手紙をびりびりと破く。
 コンデンスミルクをたっぷりとかけ、リョウは恋文を食べてしまった。
 

「まずいね」
 そういって、咳き込んだリョウの吐息は甘ったるいようなインクくさいような不思議な匂いだった。


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