夢見る汗牛充棟
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2006年05月28日(日) ねこと約束 2

 おれが、耳で聞いた最後の声だ。
 サトコの声は、頑丈でしなやかな縄だった。おれの意識はそれにしがみ付いていた。ドブネズミの奴がおれの側に立っていた。
 最近なんでこんなに眠いんだろうと思っていた矢先、まるで意思をもった投網みたいなものがいつの間にかおれをからめていて、強い力でおれを引っ張り出そうとした。外へ。おれと投網の戦いが始まった。
 おれは、おれを引きずり出そうとする力に逆らった。本気で爪を立てて、渾身の力でサトコが祈りで編み上げた縄にしがみ付いていた。
 ドブネズミは、どちらに加勢もせずにただ側にいて、おれと投網の戦いを眺めていただけだ。
「でも、ねこさん。きみは、けっきょく、いっちゃったんだ」
「……ぅ」
 長い戦い。薄らぐ意識。一瞬気がゆるんだ時、おれの爪から縄が外れた。あっけなく。おれは、もう一度と伸びてくる縄に前足を伸ばした。めいいっぱい、爪だって伸ばした。サトコの声に向かって。――届かなかった。あんなことなら、爪なんて切ってもらわなきゃ良かった。
「……あれは、爪が滑ったんだ。やり直しを要求する」
「だから、ねえ」
 困ったように首を振るドブネズミを横目で見ておれは口元を歪めた。
 ネコだって、ニヒルに笑いたい。―― 時にはさ。

 「うそだよ。ほんとはもう、わかってんだ」
 おれは、うっそりと座り直した。「七日もおれにつきあってくれて、ありがとさん。ごくろうさん。でも、おれ行かない。おれ置いてとっとと消えろ。猫又にはなりそこなったけど、せめてずっとここにいるんだ。こっから動かない」――さびしいけどな。
 ドブネズミは絶句した。
 だからばいばいの代わりに、尻尾を一振りサービスしてやった。
 今日も、そろそろサトコがカツオブシを持ってくる時間。
 おれは、目を閉じる。




「なあ、なあ。起きてくれよう」 
 つつかれて、再び目を覚ました。
 呆れたことに、ドブネズミは、まだおれの側に居た。
 おれはしかめ面をしながらのそりと身を起こしたけれど、尻尾だけは真っ直ぐぴんと立っていた。嬉しがっている、おれ。
「まだ、帰ってないのかよ」
「うん。おいら、気だけは長いからさ」
 きまり悪そうにドブネズミが頭を掻いた。
「……なんなんだ?」
「ほら、そこ、そこ見て」
 ドブネズミが指差した先におれは、目をやった。

 縁側は、天気がいいので今日も開けっ放しだった。
 一匹の子猫が上がりこんで、一心不乱にカツオブシを喰っていた。
「あー、腹へってんだな」
 見たって別に、腹は立たない。おれには、もう必要ないものだから。
「あらら?」 スリッパの音。次いで声がした。
 サトコが現れても、子猫は逃げなかった。慣れているのか、無邪気なのか。逃げるかわりに、「にぃ」 と元気いっぱい愛らしい声で挨拶した。
 翻訳すれば、「いただいてますっ」ってくらいなもんか。
 サトコは、くすくす笑って呟いた。
「ああ。おやつ取られちゃったわねぇ」
 知るか、喰わない奴が悪いってな感じで子猫はカツオブシを喰っていた。
「……あのね、本当はカツオブシは身体に悪いんだよ。だから、あの子もこれ大好きだったけど、あんまりあげなかったの。だってね、栄養が偏っちゃうでしょう?」
 それから、サトコは、両手を合わせた。
「あ、そうだ。ちょっと待ってて」

 サトコはもう一度奥へひっこんで、今度は片手にもう一皿のカツオブシを持ってきた。ついでに反対側の手には猫缶だ。猫缶の中身は、速やかに子猫の喰っている皿に空けられた。サトコは残ったもう一皿のカツオブシをもって庭先に出た。子猫のおかわり用じゃなかったみたい。
 しゃがみこんだ姿勢で、動かない。何をしているのかと思ったらすぐに煙が立ちのぼった。煙は、カツオブシの匂いがした。
――そっか、これがカツオブシの匂いだっけ。おれは、思い出した。涎が湧いた。なんて極上、なんて美味そう。
 サトコは、カツオブシを煙に変えてくれていた。
「うん、そうだ。こうすれば、これはお前だけのものだよね?」
 サトコは、目を細めて空を見上げていた。
 どうして、そんなやさしい目で空を見ているんだ?おれは、ここ。縁側。
 おれは、ここにいるんだよ。
 極上ハナガツオ風味の煙が鼻と目をむず痒く刺激するせいで。
「おーい。泣くなよぅ」 ぽん、ぽんとドブネズミの小さな手がおれの身体に触れた。慰めようってのか。生意気なドブネズミ。
「ないてにゃい。これは、煙が目にしみたんだっ」
「よしよしよし」
 ブネズミが、ちまちまと小刻みにおれを撫でていた。
 おれのやせ我慢もここまでだった。

 にゃあ。にゃあ。にゃあ。にゃあ。にゃあ。
 泣いた。泣いた。泣いた。もう、止まんない。
 恥も外聞もなくおれは泣き喚いた。

 みい。みい。みい。みい。みい。みい。みい。

 奇妙な二重奏だ。
 気がつけば、サトコの目の前の子猫も鳴いていた。心細い子どもが母さんを呼ぶような、か細いけれど懸命な声だ。おれには、わかる。あの子猫には、ここが猫生の勝負のしどころだってことが。家を飯をぬくもりを手に入れられるかどうかの分かれ目。声を聞いたサトコは、それはもうやさしい目をした。おれが、大好きだった目だ。
 おめでとさん。サトコはやさしいんだぞ。お前の未来は安泰だ。
 ちきしょう、くそったれ。その手は、その目は、おれのんだ。
 おれのだったんだ…………。でも、……幸せに、なれ。

「うちの子になる?」
「にい」
「よし、いいお返事。そうか。なるかぁ」
「にい」
「……うちにね、ずーっと居たの。すっごく甘ったれの、すっごく可愛い子がね」
「にい」
「十七年頑張って一緒にいてくれたんだよ」
「にい」
「あの子にね、猫又になれってよく言いきかせてたの。本当にそうだったら、嬉しかったって今でも思うけど、でも、ちゃんといけたかなぁ。あっちで誰かにいやってほどなでてもらっているかなぁ。寂しがりやだから。心細くて泣いてないかなぁ」
「にい」
「大丈夫かなぁ」
「にい」


「……すっごい甘ったれの、すっごい可愛い子?」
 隣でしきりと首をひねっているドブネズミに鉄槌を食らわす余裕もなかった。さらに、泣いた。子猫に勝手に返事をされた悔しさに。その他もろもろの寂しさやら清々しさやら。複雑に入り乱れた気持ちで、にゃあにゃあとおれは泣いた。

 カツオブシ味の香ばしい煙は、おれの食欲をそそりつつ空に昇っていった。

 そんで、すっかり声も枯れて、おれが泣くのにもいい加減飽きた頃だ。
 泣いて、洗われて、洗われて、洗われて、疲れてぼんやり空を見てたおれに、もったいぶって、大真面目にドブネズミのやつが聞いた。
「ところでさ、あのカツオブシ、何処まで行くのか知ってる?」
「……知るもんか」
 おれは、そっぽ向いた。泣き喚いたせいで、きまりが悪い。
「あの世のでっかい食卓の然るべき空席まで行くことになってるのさ 」
「……」 腹の虫が七日ぶりにぐうと鳴った。くそう。




「いっぱい手間かけさせて悪かったな」
 謝られた当のドブネズミはきょとん、とした。
「いやいやいや。楽な方だから。ねこさんてば、ぜんぜん悪いほうじゃないから」
 ドブネズミの口調は、まったくのお世辞で言っているわけでもなさそうだった。これで良いほうならいつもはどんなんだ? 一仕事に何日かかるんだ? そんな疑問が渦巻いた。
「歩合制だから、日数かかるのってけっこう辛いんだけどね」
 ドブネズミは、よよよと泣きまねをした。ばかだ。

 そういや、気になっていた事がある。
「どうしてドブネズミなんだ? 本当は、ネズミじゃないんだろ?」
「うん?」 ドブネズミは、つぶらな目をぱちんと瞬いた。
「この姿はね、サービスの一環。おいらね、どんな姿にでもなれるけど、そんならいっそ、追いかけてて楽しいものがいいかなぁって。ネコだったら、やっぱネズミだよね?」
 根本的に間違えている。おれは、教えてやった。
「いまどきの、由緒正しい家ネコ様は、ネズミなんか追いかけない」 反対に追いかけられることは、あってもだ。
「ええ、うそ」
 ドブネズミは、驚いて、次いでがっくりとうなだれた。ついでに髭までしおれている。「大好評間違いなしだと思ってたのにぃ」
「それは、古きよき時代のネコだろ?」
「……じゃあ、ねこさんが、追っかけて楽しいものってなにさ?」
 そうだなぁ、とおれは、答えた。考えるまでもない。
「おれの好きなのは、サトコが作ったアルミホイルを丸めたちっさいボールだ!」
 銀色のぴかぴかしたやつ。あれを投げられたら、おれは何処までだって追いかけて行く。
「えええ?」ドブネズミは、はなはだしく不本意な顔をした。
「由緒正しい水先案内係のおいらに、アルミホイル丸めた銀ボールになれだってぇ?」情けなそうな声。
 おれは、確固たる意思を込めて言い切った。
「なれ」
 
 ちょっと、えらそうだったか?
 銀色ボールが空飛んだなら、下からは星みたいに見えるかも、なんて思ったんだ。そろそろ一番星が顔を出すから。
「うううう」苦悩しながらドブネズミは言った。
「わ、わかったよ。おいらも男だ」
 どうして、ドブネズミはこんなに寛容なんだろう。すごくいい奴だ。
 おれは、ドブネズミの身体をざりざりと舐めた。困らせたお詫びとささやかな感謝を込めてだな。
「う、きゅきゅきゅきゅ。よっ、よせやい」
 ドブネズミは、変な声で笑いながら、身を捩っていた。そういや、おれの舌って痛いんだ。

 そんじゃあ、と起き上がって身体を弓のようにして伸びをした。
 大丈夫。身体は、軽いし。よく跳べそう。
 ドブネズミの姿がふっと消えた。あとにはくしゃくしゃに丸めたアルミホイル製銀色ボールがひとつ。質感もサイズも、光沢も、丸め具合もちょうどよくって、おれは満足だ。ごく自然に喉が鳴った。

「ねこさん、ちゃあんとおいらを追っかけてくるんだよ」

 銀の小さなボールがそう言って、きらめきながら思いっきり飛んだ。
 おれは、ときめきを感じながら、力漲る後ろ足で思いっきり跳んだ。
 前足を、爪を伸ばして。きらめく、光を追いかけて。
 高く。高く。高く。


おわり




ぷんさんへ。
きみは、最高のねこさんでした。
願わくば、天空の世界で幸いであらんことを。
天界の食卓で美味しいご馳走にかこまれ
たくさんの神さまたちがきみを撫でてくれますように。
そうして、一瞬たりとも寂しいことなく体を休め、
また、わくわくしながら宇宙のどこかに生まれてきますように。
きみが今日も大好きです。ありがとうね


2006年05月27日(土) ねこと約束 1

 おれは、臨戦態勢にあった。寝ること、すなわちこれ戦いなの。
「おおい、ねこさんてば。起きてよう。いいかげん」
 寝てるおれを起こそうとしている奴がいた。おれはとにかく無視するが、敵もさるものだ。
「ねえ、ってばさ」
 しつこく、繰り返される呼びかけ。
 しまいには「うるせえ、おれは眠いんだ」という唸りで応える。このやりとり、一体何度目なんだっけ。
 ここは、お気に入りの縁側だ。日中の日当たりはいいし、落ち着く香りもする。
 この場所からおれは、動くつもりなんてこれっぽちもなかった。

 ここ数日の間、しつこくしつこくおれを呼び続けるのは、少し甲高い間延びした声だ。好きな声じゃない。むしろ腹が立つ、むかむかする。尻尾を動かす労力さえ惜しい。起きてなんかやんないぞとおれは奮闘中なのだった。
「ねこさんてば、おいら思うに、そんなに寝てると溶けちゃうんでない?」
 
 心だけで答える。うるせい。ネコが寝るのは、ニンゲン公認なの。寝子だから、ネコってんだ。――だいたい、ねこなんて、気安くおれを呼ばないで欲しい。そう呼んでいいのは――。




「ねーこ、ねこ、ねこぉ」
 サトコはふざけていつもおれを呼んだ。
 おれは、軽く尻尾の先だけ振って応える。立ち上がって飛びつくなんて軽々しい真似は、子どもがすることだからだ。
 サトコはつまらながって、ますます「ねこねこ」と言いはじめる。しまいにゃ、おれ、面倒になって、尻尾を振るのもやめちまう。だいたい、おれの名前は“ねこ”じゃない。遺憾だって意思表明のつもり。頑として無視しし続けていると、ごうを煮やしたサトコは、おれをひょーいと抱き上げてしまう。
「うあーん」
 おれは、しかめ面で重々しく抗議をする。実は、期待に胸をふくらませてさ。
 サトコは嬉しそうにおれに頬をすり寄せて、ついでに器用な手指で、こちょこちょとくすぐり始める。耳をぺたんと押しつぶしたり。軟らかい足の裏を、ぐにぐにマッサージしたりだ。快楽の殿堂だなありゃ。おれは、ぐでぐでになっていく。「ぐるぐるぐる、ぐずぐずぐず、きゆぅぅ」
 鼻が鳴ったり喉が鳴ったりして忙しい。大人にはあるまじき醜態だが、生理現象なのでいかんともしがたく。

 そんなわけだ。……って、わかんねえよな。


 ともかくおれには、肉球が未だ軟らかなベビーピンクだった時分から、口癖のように言いきかせられていたことがあったの。
「いーい?」
 サトコは言った。抜かりなく両手で、おれのことをなでくりながら。仰向けになって床でぐんにょりしているおれときたら腹をつつかれても伸びたまんまだった。
「もう、緊張感がない子ねぇ」
 サトコはぶつぶつ言ったが、仕方がなくないか? この場合。
 
 サトコがひたすら言い聞かせたことはただ一つだ。
 トイレはネコシーツでとか、ゲロはフローリングの上で、なんて了見の狭いことをサトコはくだくだ言わなかった。

 ――百年生きて立派な猫又になってね。
 
 猫又ってのは、とにかく長生きするとなれるらしいネコの変種だ。
 尻尾が二股に分かれるまで気合を入れて生きるのがこつなんだって。
「どう? 頑張れる?」
 その度にサトコは、覗き込むようにして額を押し付けてきた。
 いつも「あーん」と応えた。そうすりゃ、サトコが笑ってくれるからだ。
「おお、そうか。猫又目指すか。えらいぞ、ねぇこ」
 再びもみくしゃにされる、おれ。
 だから、おれの名前、ねこじゃないって。

「ねこさぁん?」




「なんだかなぁ。困っちゃうなぁ。無視はとっても切ないんだなぁ」
 困り果てた声と、ふうって音がした。めげもせず、おれに呼びかけ続ける奴。こいつは、おれが投網に絡めとられて引っこ抜かれる一部始終を、側でじっと眺めていた奴だった。いやな奴だ。物腰はやわらかいけど、絶対いやな奴だ。―― そいつが、疲れたって風にため息ついた音だった。ざまみろだ。
「……そういう頑なな態度。おいら、困っちゃうんだなぁ。そりゃあさ、昇天は各個人の自由意志に任されるべきだっていう学説だって確かにあるんだ。おいら自身も無理強いは良くないっていう考えには反対じゃないし。こういう仕事だからこそ深い愛が必要なんだし。うん。だから、強引な牽引したくないのよ。でも、でもね、環境保全からみても、明らかに一緒に来てもらうほうが望ましいの。標準値を超えた“ものでなし”が物質界に与える影響については、まだまだ解明されてないからね。このことは、輪廻監査機構の公式見解にもあるんだよ。ほら、牽引手引書の第一章第三節のここんとこなんだけど――」

 大量の言葉が、右の耳から左の耳へさわやかに通り抜けていった。
 わけわからん。
 おれが目を開けたのは、べつに演説に感銘を受けたからじゃない。
 ふいに鼻先をくすぐった何かのせいだ。ひらけた視界に、細くて赤い紐がひらひらした。目にしたおれは、むずむずした。こういうの、非常に弱いんだ。ほとんど反射で動いてる。
 おれは、むくりと起き上がりざまに前足で赤い紐をひっかけようとする。
 すかっと空振りする右前足。しまった。

「あ、起きた」やつが、目を輝かせて言った。
 小さい両手で、小さい本を開いている。開いた本からは、おれの衝動を誘ったしおり代わりの赤い紐がたらりと垂れていた。ええ、腹たつな。
「きゅきゅきゅ」
 やつが笑うと髭が小刻みにふるえた。
「嬉しいな。やっと、わかってくれたんだね。おいらの気持ち」
 感極まって、抱きついてこようとするもんで、おれは毛を膨らませてきっぱり威嚇する。
「ちっとも、わかんねえ」
「……んじゃ、ちょこっとだけ輪廻監査機構の公式見解、読んでみる?」
 上目遣いされたって、可愛くなんかないぞ。
「ぜったい、読まない」
 言い切ってやったら、やつはしょんぼりと肩を落とした。

 やつは、ウエストポーチを装着した二足歩行のドブネズミだ。大きさもそんなもの。濃い灰色で、固そうな剛毛。ちょろりとした赤黒い長い尻尾をしたやつ。はじめは齧られるかと思って、おれ、ぞっとしたけれど、見た目に反して物腰は丁寧。
 おれの傍らで「おいらと行こうよぅ」としきりと勧誘をかけるも、進展なくはや数日のお付き合い。ドブネズミは、ごり押しせず、辛抱強くおれから離れない。

 ドブネズミは、諦めたのか本をぱたりと閉じると、ご丁寧にうんとこしょとウエストポーチに仕舞い込んだ。それから、大げさに短い両手を広げておれに迫る。
「あっちは、いいよぅ。マタタビ酒は美味いし、猫ちゃんはきれいだ」
「酒にも女にも興味ない」
「あ、なーんだ。ねこさんてば、去勢済かぁ」
 ドブネズミはぶつぶつ言った。「どおーりで、大人気ないと思ったよ」
「うるさい。うるさい! おれは、立派な、猫又になんの。ほっとけ」
 こんなドブネズミの勧誘になど負けるもんか。おれ、ぜったい約束を守るから。二つに分かれた尻尾を胸を張って見せびらかすんだ。そしたらサトコはすごく喜んで、おれを誉めて、きっとちやほやしてくれる。
 おれは、もう一回うずくまって、そっぽ向いてふて寝の体勢に入った。
 もう、完全無視だからな。こんなやつ。

 ドブネズミは、とてととと、と近づいてきたらしい。足音がした。そんで図々しくもおれにもたれかかった。ほとんど重たくないので放っておく。悔しいけれど重さや触れられた感触が久々なのでちょっと嬉しかったのも本当だ。――もう七日も触れられてないんだ、おれ。
「ふう。いいクッション」
 一息ついた、さも楽ちんだというお気楽な声。そして、ドブネズミは続けた。「……でもねえ、ねこさんてば。もう身体も燃やされて灰なんだし。身体がないとなれないんじゃなの? 猫又って」
「……」
「だいたいね? おいらが思うに、死なないで長生きして見事成るのが、猫又なんじゃないのかなぁ。どうなの? 仮に身体があったとしてもね、亡骸に戻っちゃ、そいつはゾンビなんじゃないのかなぁ。ゾンビ……おわっと!!」
 ドブネズミが、すってんころりと転がって奇声を発した。おれが、急に毛を逆立てて飛び起きたせいだ。ドブネズミも痛いかもしれないが、はっきり言っておれはもっと痛かった。いいパンチだった。
 おれは喚いた。
「はい、はいはいはい! うるせーよ! わーるかったな。そーだよ。その通りだよ」
 上体を起こしたドブネズミが、ぶるるんと頭を振って腰をさするのなんかどうでもいい。
「どーせ、おれの身体はもう六日も前に燃え尽きて、灰だよ。灰。どーせ、紙の箱に入れられて、花で飾られて、カリカリのマグロ味パックなんかまで一緒に入れられちゃって、もくもく燃やされちゃって、とっくに煙だよ。煙」

 喚きつつ、がむしゃらに前足を使った張り手を繰り出すおれ。右、左。
 ドブネズミの奴「ひー!」とか言いながらも、ことごとく避けた。
 右。左。右。
 こんにゃろう、華麗な足捌きだ。
「よけんな!」
「ね、ね。落ち着いて?」
「うるせー、落ち着けるか!だからなんだ。だからなんだよ!」

 往生際が悪いとか、言いたければ言え。
 おれはこうして、かれこれ七日間もおれが好きだった縁側の板の上でがんばっているのだ。ちびでまだ上手に爪がひっこめられなかった頃から馴染みの場所。板張りのそこかしこに、無数の引っかき傷がついている。これ、ぜんぶおれがつけたんだ。
 座布団が、一等陽の当たる場所にすうっと置きっ放しになっている。その前に置かれた、器の中に刺さっている細いものが絶えず煙を昇らせていく。おれが今、たったひとつ、感じることのできる匂いの発生源がこれ。おれのために燃やしている煙だから、嗅げるんだとドブネズミは言った。
 毎日、朝晩に開封したてのカツオブシの入った小皿が置かれる。これもおれのためだってわかってる。でも、カツオブシって、どんな匂いだっけ。あんなに好きだったのに、新鮮な筈なのに、今のおれにはこの匂い、わかんない。

「お花よりも、こっちがいいよね?」
 日が昇る頃に、沈む頃にサトコは、遠くを眺めてちょっと笑う。手をあわせて。――安らかにしてる? と聞くんだ。空に。
 おれは、ここにいるよって。何度、呼んでみただろう。
「……だからね、取り戻せないものがあるってどうして認めらんないの?」
 おれの激情が収まった頃、ドブネズミが静かに言った。
 だってさ。
「いっちゃやだって言ったんだ。お願い、いかないでって」
 サトコが。


2006年05月24日(水) 酒と酵母のはなし 大内弘造

技報堂出版 1900円(税抜)
ISBN 4−7655−4411−7 C1070

図書館で借り 読了。 欲しい。

泣くほど面白くかつ興味深かった。
酵母について、文系さんにもわかりやすく平易に伝えてくれる。
酒好きさんは、読めば酵母への感謝、さらには尊敬の念さえ浮かぶであろう。

イーストで蜂蜜酒をこさえたら、蜂蜜があまりに辛口であまりに酔っ払う
液体に変化していたことに驚嘆し、酵母という生き物に興味を抱いたので
借りました。

できれば、ど○ろく、造ってみたいなぁ、と。ええい法律のすかたん。


私的メモ

酵母
真核細胞な単細胞生物。白く見え、形状は球形〜楕円。
単独で、出芽増殖する。
雌雄があり、接合して交雑体酵母(二倍体)にもなる。
これも出芽増殖する。(遺伝子が交じり合った兄弟ができる)
全長は5〜10マイクロメートル。
自分で運動しない。比重は水より重いので、水に沈む。


ブドウ・リンゴなど果実。花の蜜。樹液などに住んでいたりする。

酵母の強み。
 � 〇請任�あってもなくても大丈夫
 �◆.譽皀麒造澆了世紡僂┐�
 �� 濃い糖分に強い
 �ぁ‖舂未離▲襯魁璽襪鮴源困靴修譴紡僂┐襦�

……上記の点で、カビや細菌に勝って増殖を果たせる。えらい。

酒やパンに有用な酵母。
学名 サッカロミセス・セレビジエ
(Saccharomyces cerevisiae)



糖(ブドウ糖・果糖・ショ糖・麦芽糖)を好む。
デンプンなどを自力で分解・吸収できないので分解酵素の助けが必要。
※だから、お米に酵母入れても酒はできない。麹がデンプンを糖にしてくれないと。


要するに、穀物酒は、果実酒よりも1工程余分に必要ってこと。

穀物酒であるビール(麦酒)と清酒の違い。

ビール:原料大麦は全て麦芽にして用いる。
    麦芽が糖化剤であり主原料でもある。

清酒 :主原料は米。米の20%程度が糖化剤(麹)にあてられる。

・ビール:糖化(マルトース)→→→|煮沸 発酵→→→

 糖化を終えて、発酵を行う。度数は、初発の糖濃度次第。

・清酒 :糖化(グルコース)→→→→→→→→→→→→
     発酵→→→→→→→→→→→→→→→→→→

 糖化したしりから発酵する。高アルコールの飲み物を作り易い。


2006年05月21日(日) 銀朱の花 付けたり青ジソ植え

とりあえずは久々に快晴。お日様があるのは嬉しいものだ。
洗濯ものも良く乾くし。でも温度変化が激しすぎやしませんか?

無性にうつうつでコバルト文庫を衝動買い。
最近の本屋は、コバルトにまでカバーをかけるのがせちがらい。
カバーがかかってなければ、本屋でざらっと読んでいくのに。
(だから、カバーがかけられるんでしょうけど)

せめてビニールカバーを前提にして、背表紙に粗筋を付して欲しい。
折り返しに粗筋つけられても、包装してあったら確かめようがない。
どんな話かさっぱりわからないのは辛いものがある。


金蓮花 【銀朱の花】�機Ν供μ瓦�訪れる

異質な存在故に虐げられながらも素直に健やかな心に育った少女が
聖なる存在、貴い存在として国主に見出される。

物語の基本中の基本。されど愛される基本ってやつ。

コバルト文庫さん、昔お世話になっているので、骨の髄まで
染み込んでいるんだろうか。今でも新刊待っている本もあるし。
氷室さんとか、前田さんとかー。銀金はちゃんととってあるし。

たまーに無性に読みたくなるのは、ケンタッキーフライドチキンに
似ていないこともない。

そういや一回食べるともう当分いらないやと思うところも似ている。
ケンタッキーもコバルト文庫も今となっては、それを美味しく食べられる
ほど胃と精神が若くないということを思い出すアイテムに他ならない。

……と思うのは、なんとなく悲しいものがあります。




青ジソがある程度大きくなったので、プランターと鉢に植替え。
夏場の素麺の薬味はばっちり確保した。あとは、焦れて待つのみ。
ある程度育つまでがシソはすんごくじれったいと思う。
それを過ぎると爆発的に育つんだけど。
二代目さんは害虫に強くなると書いてあったのは本当だろうか。
夜盗虫がつかないと嬉しいんですが。





本と一升瓶が右と左に立つ
胃袋には酒で脳には言葉がそそがれ
体を揺さぶって混じり合わせれば
奥から湧く微泡の繊細な余韻
ふつふつのぼり熱い胃袋をさする宵
眼からこぼれる酒の名残りは
感動に限りなく似ている何か


2006年05月17日(水) うだうだとした汚染物質

単に現実世界を爽やかに過ごすための、愚痴の垂れ流し。

おいしいプロポーズ……だったか。
おとぎ話みたいなふわふわした雰囲気だなぁと思う。
気軽にあたま空っぽにして笑って見ていられるので嫌いじゃない。
……一点を除いて。

一点とは、兄だ。
借金こさえて首が回らなくなっては親族に泣き入れ。
エンドレス。こういう人は病気なので一生直らん。

そういう身内がリアルに存在するので、出てくるたびに
しばき倒して、踏んづけて、蹴り飛ばして、塩まいて
罵り倒したい気持ちに襲われる……わけでなく、
「ここは多分笑うところなんだぞう、自分」とか思うにつけて
もやっと悲しいというか、空しいというか、さむーい思いに
たゆたゆしてしまうわけ。なむー。


最近も借金で首回らなくなって、母に泣きついてきた。
たゆみなく繰り返して四回目。
継続は力なりってこういう時に使用していいんだろうか。
破産して欲しい。心から。

誰だよ、こんな学習能力と堪え性と計画性が根絶しとる男に
金を貸したのは。
断言してもいいですが、消費者金融が判で押したように添付している
【ご利用は計画的に】なんて文言には何の効果もありゃしない。

もう不惑も近い人間が。貯金一銭もなし。借金三百万。
旅行に行ったり、大盤振る舞いして遊びまわったり、とにかく
遊興した挙句の果てに。「エーン ママ ハラエナイヨー」
すっとこどっこいが。

相談があるとやって来た時に、前科があるから母訊ねて
「またサラ金じゃないだろうね?」
これに答えて曰く、彼は。
「サラ金じゃない。カードローン」
……日本語ですか? 意味がよくわかりませんでした。
結果として何が違うのか。

そうゆうわけで、

私は金銭貸借はお気楽なものですと触れ回る現代の風潮を憎み、
今は無きレオタード姉さんや、もう無いであろうチワワと計画性皆無親父を憎み、
馬鹿と貧乏人に笑顔で金を貸す企業を憎み、踊らされて借りる馬鹿と貧乏人を憎み、
返せなくても誰かが助けてくれるさと考える浅慮と厚顔無恥を憎む。


他人なら、嘲笑しつつ眺めていられるのだが、身内だとな。笑えない
五年や六年周期で、借金SOS。あえて良かった探しをするならば
オリンピックよりは周期が長いので良かった、でしょうか。……ふぅ。

借金話でこじれて、変に逆恨みされた挙句に、殺されたり、山に埋められたり
したら、さぞかし納得いかないだろうな、と思います。ぶっちゃけ。


2006年05月14日(日) 饗宴  プラトン 付 ベランダ備忘録:甘ラベ×2植替

岩波文庫 青601−3

一応だけど、読了。

哲学の徒ではないので。読み物として楽しく。
シチュエーションがなかなか楽しいです。

青年〜親父まで何れも前日臨界点までアルコール摂取の翌日
二日酔いで青褪めつつの迎え酒ちゅう状況です。

乱入するのもひたすら酔っ払い。

こんなで演説ぶったなら、現代では酔っ払いがくだ巻いてるぞ
と思われてしまうでしょうが、さすが古代ギリシャの市民達は違います。

奴隷に働かせて、寝椅子にマグロのように横たわって、いいご身分の
酔漢たちが、迎え酒しつつエロスについてひとくさり演説ぶつお話
……とか言うと情緒もへったくれもないですが。

出題:エロスを賛美せよ。

エロス:ギリシアの両性具有の恋愛の神。(神話・伝承事典)

■ファイドロスさん語り

エロスは、もっとも古い神に属するので偉大だ。
エロスはすばらしいものの源泉である。
即ち、愛する少年が愛者によって愛されること。
そして愛者が愛する少年を愛すること。これらは、愛(エロス)の賜物だ。
愛者は、愛ゆえに徳ある人――と愛する少年から見られるように――振舞おうとする。
愛から出た徳がもっとも美しい。

愛者は愛する少年の前ではかっこつけたい。という心理は理解できるけど
愛者と愛する少年からなる軍隊は全世界を敵にまわしても勝つね! とか
言うのは……比喩が大げさで酔っ払ってるなーと思っちゃうな。


■パゥサニヤスさん語り:すげーややこしひ。うんざりした。

エロスと呼ばれる神は唯一ではなく二種類ある。(と前説を手直し)
賛美すべきエロスは、ウラニヤ(天の娘)より出、男性(少年愛)にのみ預かり、
放縦にならず強くて理性に富む者を愛好する。
高貴で優秀なものをあからさまに愛することが美しい。
自分を向上させると期待できるような人への奉仕はよい。
天上のエロスとは、徳の見返りを求めて、相手に好意を与えること。

未成熟な少年は、まだ立派になるか否か未確定であるので立派な人が
愛する対象としてよろしくない。(……とかいうと少年愛は投機のようだ。)
有徳の士だと信じて好意を示したのが見当違いだったとしても、その
見当違いは美しい。(……見る目がないのは駄目だろー)


■エリキュシマコスさん。
医者。なんか生真面目ーで堅物ーな感じ。よくわからんかった。
わからんなりに、音楽のたとえ話はなんとなく美しい。

■アリストファネスさん。

ざっくばらんな感じな語り口。たとえ話は、とってもファンタジー。
読み物として面白し。
昔、人間の性には3種あった。男・女・両性。
男は太陽から、女性は地球から。両性は月から。
ふんで生意気な昔の人間を神様が真っ二つに切った。
ので今の人間は、片割れを求める割符みたいなもんである。
太陽男の半身は男を求め、地球女は女を求め、月男は女を、月女は男を求めることになる。
二つに裂かれた半身なので、欠けた者である。
かつて完全な者だった。完全な者に対する憧憬と追求がエロス。
あらゆる人は昔ながらの本性に還元しつつ自分のものとなる愛人を
獲得することによってのみ幸福になれる。
これを成就させる神はエロスなのでエロスを賛美する。

■アガトンさん。美青年らしい。きっとすんごい耽美ーな人だ。

すべてのうちでもっとも美しくもっとも優れていてもっとも福なる神がエロスだ。
最年少の神。柔軟。エロスは老齢を遠ざかり、青年に常駐する。
徳:公正を持つ。自制を持つ。勇気を持つ。(根拠はわからんかった)
知恵:詩人。そして、あらゆる神の師。
美に対する愛が生じた時、初めて秩序だつ。

……とにかく、ベタ褒め?


■ソクラテスさん。

「知恵ある者はもはや知恵を愛求することをしないでしょう。
しかし、他方無知者もまた知恵を愛求することもなければ、
また知者になりたいと願うこともないものです。…………
自ら美しくも善くも聡明でもないくせに、それで自ら充分
だと満足していること、ちょうどその事に・ですから自ら
欠乏を感じていない者は、自らその欠乏を感じていないものを
欲求するはずもありません」


という下りが、痛い痛い痛い痛い。
美しくも善くも聡明でもないことに満足している訳ではないですが、
もうしゃーねえな、と諦めちゃっているのは事実。したがって欲求も薄いです。あいたた。

少年愛からはじめ、正しい道筋で上昇したなら、究極の美(美の本質)にたどり着ける。
地上の個々の美しきものから出発して、かの最高美を目指して絶えずいよいよ高く昇り行くこと。

一つの美しい肉体→二つの美しい肉体→→美しい肉体→美しい職業活動→美しい学問→美の本質。

■アルキビヤデスさん。
乱入してきた酔っ払い。

出題:ソクラテスを賞賛せよ。

堅苦しい話でなく、ソクラテスさんの人為についての語り。
とっても面白かったです。でも……すごーく酔ってると思う。絶対。
酔ってなきゃ言えません。こんなこと。んで、愛の恨み言のようにも聞こえたり。
翌朝、自分で言ったことにのた打ち回ったんじゃないかと。

とりあえず、ソクラテスさんは酒豪だ。見習いたい。(そこか)



久々に、午後からだけど雨が上がった。じっとりした数日間だった。

午後から、スィートラベンダー×2鉢の植替え。
赤玉土と腐葉土が切れた。買わねば。

切った枝と、鉢から抜く時にうっかり折れちゃった枝をさし芽。
なんとなく、もったいないからさしてみただけであって、根っこが出たら
どこに植えようとかそういう展望はないことに差してから気がついた。
ベランダは、肥料をやっても決して大きくならん。どうするんだ?

チワワ親父並みに計画性ない自分に、暗い気分になった午後。


2006年05月13日(土) 備忘録 付けたり半熟味つき卵

毎日雨続きで、ティツリーがくってりと頭をたれています。
……稲穂じゃないんで、嬉しくない。
上の先端に新しい葉がたくさん出て、バランスが悪いのが
雨で余計に重たくなるせいなんですが、上に伸びるものなのに
最先端を切っていいものかどうか、わからん。
ぐぐってみても、ティツリーの育て方の詳細みつからないし。
持ってる本にも載ってない。どうしたもんか。

ミント類だけ大喜びで、雨が続くだけ大きくなるような
気がします。

ローズゼラニウム、切った枝がもったいないので一応さし芽
してみた。枝切って、半日程度転がしておいて、その後に
土は赤玉小粒。そこらの素焼き鉢。ルートン使用。

さし芽は苦手で、あんま成功したことないです。
風の当たらない半日陰なんて、どこ探せばよいのやらです。
仕方なく室内に置く。

ポリポットにとった青ジソ5本に玉肥料各2粒づつ置く。


◇味つき卵食べたひ。

調べたところによると径20cmの鍋とふた。
お玉一杯分の水。……なんだそうですが。

家には20cmの鍋がないので、一番小さい鍋。
卵は6個。

水はこの鍋でこの量でお玉一杯はマズイと感じたので、300cc程度。

中火で6分。 火から下ろして 4分。

ストップウォッチないので、多少誤差あり。
一個は食すため、水にさらし、

残りは冷やしておいたタレに浸して冷蔵庫へ。

タレ:調べたところによると、一例として
かつおやこんぶダシ+しょうゆ+酒とかみりん。
半日〜一日程度漬け込む。とのこと。


用意は、昆布ダシに酒+かつおダシしょうゆ+おろししょうが。
しょっぱいの嫌なので薄めで。結果的にはテンツユの味だった。
……非常に不安だが。食べられないものにはならんだろう。

そんなダシに熱いうちに卵を投入。
水にさらした1個を食したところ、半熟は半熟だけど
もっとトロトロが望みだった。
ので、次回は、中火で6分。火止めて3分もしくは
中火で5分、火止めて4分でやってみるべし。


2006年05月10日(水) 蜂蜜酒 実験 備忘録

蜂蜜 300g(ごく普通のブレンド蜂蜜)
煮詰めた 米ぬか抽出液(酵母の餌として)
濃く煮出した紅茶(渋みとして)
レモン汁(酸味として)
ドライイースト 小さじ1ほど

ビンは空になった一升瓶。
熱湯通して、あとは1リットルに印。

一升瓶にだばだばと
水+米ぬか液+紅茶+蜂蜜+ドライイースト投入。
がしゅがしゅと振り混ぜ。

ビンの口をキッチンペーパーで覆い輪ゴムで止めて
うえにお猪口をかぶせて蓋。
(炭酸ガスが生じるので密封してはいけない)

そんで冷蔵庫の後ろに隙間があるのでそこに安置。
気温は24度〜27度。液温は一度計ったときは26度。

3日したら、泡が出なくなっちゃたので。
「新妻でもできるほど簡単なんじゃねえですか!?」
と憤りながら500ccほど水を追加。
ついでに半端のドライイースト全部投入してしまった。11g/袋
……多分入れすぎ。

どのような結果であろうと1週間は待つべしと忍の一字で待つ。
水足す前も後も泡立ちはずっと微弱で優しい泡立ちの連続。

仕込みが5月2日の夜。
オリビキして他の一升瓶に移したのが5月8日の夜。
オリは本にあった通りにレモン汁で洗い冷蔵庫で保存。

味:
香りは蜂蜜。良い香りと思う。
香りが生きるのなら、蜂蜜の種類にこだわるのも悪くないなと。
飲むと蜂蜜を想像させるような甘味はまったくなく、驚く。
辛口でレモン汁が効いているのか酸味が強い。きわめてドライ。
白ワインを飲んでいるような感じ?(高級ワインはしらない)

たとえば日本酒を飲んだときのようなふくよかな旨みというもの
には欠けるのだけれど、そこは出来上がりに蜂蜜を加えると改良
できるんだろうかと思われる。

■
できたものの一部を広口ビンにうつし、少しの蜂蜜(ハーブの)
を加えてローズマリー・セージ・タイム・ローズゼラニウムの花を
漬け込んだ。5月10日。冷蔵庫で一ヶ月くらい寝かせる予定。

さて、カドフェルさんたちが作りそうな薬草酒になるかな?
なるかな? 楽しみ。


2006年05月09日(火) ベランダの備忘録付けたり米ぬか挫折

ひたすらじとじとと鬱陶しい。雨と強風のダブルパンチが痛い。
スィートラベンダーの花がそろそろへこたれぎみなので
ざくざくと刈り取って花束にして部屋にぶら下げ。

ローズゼラニウムの花も咲ききったら摘み取り。
乾いてもいつまでも芳香が消えないので竹かごにいれて
部屋に置いてます。

ついでにタイムも少し刈り取って、これはお茶にしました。
薬くさいのでちょっとスペアミントを混ぜ混ぜ。
喉にいいとか書いてあったし。でも風味独特です。

スペアミントでアイスティ作っておくのが一番好きですが
なかなか大きくならなくて、じりじりしています。
遠慮がちに葉っぱむしってみたりするから駄目なのか!?
ごめんよ。ミントティ大好きなので我慢がきかぬです。
わき芽出ろ出ろ出ろ〜と朝に夕に念じているんですが。
早くもさもさと茂って、お茶どころかお風呂にまで入れたいもの。

植え替えたローズマリーはちょっと鉢底石と一緒に少し根っこを
むしったけれど今のところは大丈夫そうだ。良かった。

二代目青ジソは、五本はポリポットで、あと十本くらい種まいた
器にすくすく育っている。底を見たらもう根がはみ出てるし。
ベランダで去年と同じく四本育てたいけれど問題は何処に置くか
なんだよなぁ。

ワイルド苺は、二つに割った株の両方ともがすくすく育ち中。
今年も立派にアブラムシの温床。手で取っても取っても。
黒いの緑の茶色いの。もう勝手にしやがれという気分。だが負けぬ。




精米して家に大量の米ぬかがあったので、思わず昔の美肌アイテム
ぬか袋をこしらえてみた。
これでつるっつるよ! と期待に満ち溢れ、勝ち誇りながら使用。
ジンマシンが出て惨敗。ぬか袋はすっぱりとゴミ箱へ直行しました。
ジンマシンはまだ消えない。…………欝。
もう少し様子見てだめだったら皮膚科行きだなぁ。
ようするに、へんなことしないで水で洗っておけということか。


2006年05月08日(月) 奔馬 豊饒の海(二) 三島由紀夫

新潮文庫

読了。

というわけで、極めて個人的な感想をうだうだと述べる。
次の巻へ進むための儀式みたいなものです。

個人的には、よくわからん純愛ものな一作目の春の海より興味深く読めた。
本田氏は、年齢的にも理性がちな性格も寄り添いやすい。
異次元の人にひかれてしまう気持ちもわかるような気がする。
三十八歳。
落ち着いたつもりでも、青春の香りを嗅ぐと何か目覚めて暴れるものが
あるんだろう……と思ったり。「まだだ。まだ終わらんよ」って感じ?

前の巻から周到に用意されていた転生の物語。そして次巻に続く訳で。
女は一代限り。女は未練を残さず、次世代の物語に現れず。
自己完結だろうがなんだろうが今生で愛を全うし、自分のなかですっぱり
決着をつける強かさが女の愛はあるのか。
男は自分に都合の良い物語を作って完結させることができず、したがって
思い切れずにいつまでも未練を残している。
それが男の可愛さと思うか否かは好みよるだろうけど。
男の愛と女の愛の差はこれだ! といわれているようで。むにゃむにゃ。
書く側は男の愛の重さ深さを主張してるのか?
女は燃えて無くなる肉を愛し、男は転生する魂を愛すのだと言いたいのか
と思ってしまう。……うぬう。

十八年も経て、たまたま出張で出かけた先の滝で水垢離ご一緒した
若者に黒子があったからとて。おお! 転生したのか! てえ思考。
いかに本多氏の頭に清顕がこびりついていたかわかるってもんです。
(健気親父理知的眼鏡with心に傷……ってんで立派にBLもの
で主役をはれるに違いないです)

このままだと本田氏は、次の転生者にも出会いそう。気の毒な人だ。
本人どう思ってるかは別として。
清顕の愛の迷宮から一生出られないんじゃないか。ラビリンス。
したら、もはや呪いです。とりつかれてます。
日記帳は間違いなく呪いのアイテム決定。お祓いして焼いた方が良かった
よなぁ……と思っちゃう私は多分情緒を解さないのだろう。

■今回の主人公の勲君について。
前作清顕君は宇宙人のように理解不能でしたが、彼はわかりやすかった。
前世でわかり難い心を持った人だったから、今生では単純な心で単純な生
を目指したのかな。わかりやすいと好き嫌いは別の問題。

結局、何かを正したい何かを変えたいというよりはむしろ、汚れた世界の
有り様によって己が汚れることが許容できないので美意識と己の美に折り
合いがつくうちにさっさと自分を滅したいという自分勝手な欲求の為に
動いていただけのように思える。
自分の美意識を全うするために世の不正を利用していているのであって、
目的主眼はいかに理想に沿って純粋に美しく死ぬのかにあり、しかも自分
自身を騙しきっているのでその卑怯を知らない。
視野の狭さと故の盲信、危うさが青年の美と捉えられ一種の魅力であると
いうのは否定しないけれど。風土のせいか私たちの魂の中には、ひたむきに
散り急ぐものをこそ美しいと感じる遺伝子が含まれている。
おそらくはかないものを惜しむ優しさがそこに必要以上の美の要素を見出す
のだろうけど。

世界の改善というのは、刹那的な手段から達成されるものではないし、
己が汚濁にまみれ、己自身も変容しながら変容を受け入れ、無意味徒労を
知りながら何度も世の有り様に力を加えるたゆみない作業だと思う。
本当に改革をしたければ、薄汚れながら生き続けなければならない。
社会は結局絶えざる利害調整の成果でしかないように見えるし。

何を根拠にか悪人と定めた代表の幾たりかを斬って捨てたからとて、
その後により良い社会などという漠然とした化け物がのしのし歩いて
やってきてくれたりするものではないのに、こういう人たちはその後の
社会について何の責任も持たない。自分たちに続く者が出ればといいつつ
後の為に道を作るわけでない。
ただひたすら知ったこっちゃない感じなんだもんよ。

ある種の意図を持って書かれ出版された本に心酔している時点でもう
頭使ってないよなと。確信犯で判断を怠っているなと。頭いいのに。
強いて一つしか見ないなんてもったいない。
あそこまで狂信的になれたらそりゃ夜空に日輪の輝きだって見えるだろう。

……まぁいいや。多分本筋はそこじゃないだろうし。

一応清顕君はひ弱でややこしい人過ぎて幸せになりそこなったので
一つ強い肉体と単純で真っ直ぐな精神を持って生まれてみたのか。
それでも失敗して、女に生まれたら多分幸せになれると勲君は思った
らしいので、次は女の子に生まれるんでしょう。
どういう人間になったら幸せになれるのか試しているようなもんでしょか。
でもなー、こんな早々に自分の人生を見限ってばかりじゃ、何が良くなかっ
たのかわからないので何回生まれなおしても一緒なんじゃないかって気が
してしまうのだけど……この先どうなるんだろう。

涙なしには見られない本多氏は、次の転生者にも遭ってさらに道を踏み外し
てしまうのか。むしろそこが一番の気がかりです。
だって今度こそ救いたいと思ったのにその甲斐なく……ですもん。
どれほどがっくしきただろう。また救えなかったと思うなんて。
本多氏を主眼に置くとテーマは友人は良く選べになりそう。

さて、本多氏を気にかけつつ次の巻へ行きます。


2006年05月07日(日) シャーロックホームズの冒険 アーサー・コナン・ドイル

光文社文庫 新訳シャーロック・ホームズ全集1
訳 日暮雅通

気まぐれで購入。ようやっと読了。
子供の頃図書館とかで借りてわくわくしながら読んだよなぁ、と。
それでも子供の頃から、シャーロック・ホームズよりも
アルセーヌ・ルパンのほうにときめいてました。
昔から探偵より怪盗好き。

最近はホームズさんとも疎遠で、ホームズと聞くと反射的に
思い浮かべるのがいしいひさいちさんのマンガに出てくる
人間やめてるホームズ+やぶワトソンな二人組みだったり。

改めて読んでも読んだっけなぁと懐かしく思いつつ楽しかった。
赤毛組合とかまだらの紐など、昔読んだのが強く残ってます。
当時、すごく強烈でした。


「君の他に友人はいないよ」
とか平然と口にするホームズさんに。
それは、くどき文句ですか!? などと思ってみたり。

所帯持ちのワトソンさんが昔の男忘れ難く足しげく通ってしまうのを
物分り良く送り出し、時には薦めさえする奥さんってできた女性だなぁ
とか思ってみたり。

……こういうことは、昔は欠片も思わなかったのですが。


2006年05月05日(金) 背教者カドフェル 修道士カドフェル20 エリス・ピーターズ

光文社文庫 シリーズ好き。

読了。

ああああああ……終わっちゃった……。しょんぼり。
というのが正直な気持ちです。
あと短編集が一作出るけれど、それはどうやら修道士に
なるまでの話らしいので、ヒューさんは出ないんじゃん。

これより先は想像するしかないんですが、最終巻としては
これほどおだやかで、まーるくてふさわしい終わり方って
ないのではないかな、と。

皆が家に帰り着き、皆が誰かのもとへ帰り着き。
握られるべき友の手は握られたと。
フィリップ・フィッツロバートさん、はうー。
こういう人、すっごくすっごく好き好き。

敵にも味方にも好ましい人がいる。
陣が同じならきっと酒を酌み交わす良い友だっただろうという人。
互いに平穏な世界の実現のために戦っているんだし。
虚しくてもったいない話です。

贅沢言えば、最後にヒューさんが嬉しそうにお帰りをいう所とか
和やかに語らう所とか見られたりしたら最高だったのにのにのに。
頭の中で補完するしかないのね。

ラドルファス院長さまも、大好きです。


2006年05月04日(木) 春の雪 豊穣の海(一) 三島由紀夫

新潮文庫

読了。

文章上手だなーとか。巧いなーとか。言葉遣いにうっとりする。
青年の愛のこもった描写が官能的というか魅惑的というか。
青年への愛に溢れているなぁ、とか。駄目な味わい方炸裂。
あと雲の上の人。お公家さんの生活になんとなく好奇心が湧くとか。
昔の学生は小難しい話をしてんだなーとか。
関係なさそーなところで楽しんでました。

聡子さんとの間にあったのはロマンスなのかよくわからん。
本多と飯沼が主人公に抱いていたのは愛だろうけど。

あえて、萌えてみるとするならば、本多。
フランス語の本を読み散らかせる頭脳明晰で理性的な眼鏡青年。
そんで健気さんだし。


夢と転生の物語なんだそうで。難しいなぁ。
とりあえず、よくわかってないけど次行ってみます。


2006年05月03日(水) 目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩全集第8巻

光文社文庫 もらいもの。

読了。読むのにかなーり日数かかった。途中で浮気もしまくった。
ぶっ続けに読むには濃くてへたばり。

切断腐乱猟奇狂気色鮮やかな臓物散乱。ううううう。
気持ち悪かったり面白かったり、いろいろです。
【恐怖王】はノリについていけなくて読んでて疲れた。へとへと。
ゴリラがいやだよう。萌えない。
でも変態いっぱいで心ときめく。(正しい反応なのかは置いておいて)

悪霊っての、面白そうだったのに未完でがっくり。
あの後、どう話進めたんだろう。気になります。

妖虫は、はちゃめちゃなりにけっこう楽しみました。
ついでに同性愛嗜好っぽいおじーちゃん探偵の三笠探偵と
その助手の筋肉男の同居設定という取り合わせにも萌え。ふはー。
もちろんおじーちゃんが、筋肉男をどーこーするのだな。そうであろう。
ついでに、美青年守探偵さんもなんか間抜けですごく可愛いぞ。

だが、おじーちゃん好きですが、なにも猫を殺す必要があったのか?
と猫好きな私は、追求したいところでした。……ええ、だから探偵ってやつは。


2006年05月02日(火) 蜂蜜酒 ミード

ファンタジーものや、神話伝承やらでよく飲まれている
蜂蜜酒ってやつに憧れてました。いっぺん飲んでみたいなと。
蜂蜜酒はなんとなくロマンです。なんとなくうっとりです。
エルフが飲んでいそうです。ドリッズドも飲むかもしれん。
ええ、銀髪のダークエルフと銀の牡鹿亭とかでミードの入った銀杯で乾杯
してみたいですとも。心から。そしたら、髭だらけのノームにされてもいいですとも。
ミード飲んだらこげな妄想じゃなくて妙なる詩が湧くかもだし(無理)

現物を拝んだことはないですが、一応販売もしている模様。
最近では国産ものもあるらしく。
感想にはだいたいが甘くて美味しいと書いてあるので、多分私には
美味しいと思えないんだろうなと思うのがちょと悲しい。
憧れは憧れのまま妙なる神々の美酒として心にとどめておくのがいいのか。

その蜂蜜酒。けっこう簡単にホームメイドできるらしい。
つーか、そもそも新婚の新妻が子作りに励むべく家に篭って
ご亭主と励む時に、件の蜂蜜酒を作ってご亭主に飲ませたので、
ハニームーン(蜜月)なんだとか。

加熱処理していない蜂蜜にはもともと酵母が住んでいるので
水で薄めてさえやれば簡単に発酵をはじめるのだそう。
普通に売っているやつは、多分酵母死んでるので酵母を足します。

要は、水と蜂蜜とドライイーストで蜂蜜酒ができる模様です。
ただし、日本国内ではバチバチバチと法に触れます。
羨ましいな、海外では普通にスーパーとかで、ワイン用の酵母
蜂蜜酒用の酵母、ビール用の酵母など売っているらしい。

参考になりそうな本:
趣味の酒つくり 農文協 笹野好太郎著
売っているかどうかは知らないですが、図書館探せばあるでしょう。
ミードから始まり、ワイン、ビール、ドブロク、はては蒸留酒の作り方
にまで触れた実用的な一冊です。実験するかどうかは別としてもお酒が
どうやって作られるのかなど知るのはまた興味深いもの。

【How to make mead】などでぐぐっても
ばっちりです。(但し、英文)


2006年05月01日(月) ※私的メモ 十七条憲法 12〜17   聖徳太子

十二に曰く、国司(くにのつかさ)国造(くにのみやつこ)百姓より
歛(レン:かきあつめる)すること勿れ。
国に二君靡(な)く、民に両の主无(な)し。
率土兆民は王を以て主となす。
所に任ずる官司は皆是れ王家の臣。
何(いか)に敢えて(與:助詞)公に百姓を賦歛するか。

国司国造は民から搾取してはならない。
国には二人の君はいないし、民に二人の主はいない。
あまねく国土の民人の主は王である。
国を治める役職にある官は皆王の家臣である。
それなのにどうして民から搾取するのか。(賦歛:無理に税をとりたてること)



十三に曰く、諸(もろもろ)の任ずる官は同じく職掌を知れ。
或いは病或いは使いにて事に闕(か)けること有り。
然らば知り得る日には和すること會(かつて)識る如くせよ。
其れ聞か非るを以て公務を妨ぐること勿れ。

諸官は等しく己の職掌について知るべきである。
病や使いなどで職を離れ、仕事内容についてわからなくなることがある。
そんな場合、知ることができる時に、不在の間の仕事について昔から知っていたように把握せよ。
それをしないために仕事の妨げになることがあってはならない。

たしかに、知らなかったじゃ仕事にならんです。


十四に曰く
群卿百僚、嫉(にくしみ)妬(ねたむ)こと有るなかれ。
我既に人を嫉めば、人亦(また)我を嫉む。
嫉妬の患(うれい)其の極みを知らず。
所以(ゆえに)知己(おのれ)に勝れば則ち悦ばず
才己に優れば則ち嫉妬す。
是を以て五百歳の後乃(すなわ)ち今賢に遭い、
千載(さんざい)を以て一聖を得難し。
其れ賢聖を得ずば、何を以て国を治めん。

諸官は嫉妬の心を抱くことがないようにせよ。
私が人を妬み嫉むなら、人も私を妬み嫉む。
一度妬み嫉めばその憂いはとどまるところがない。
自分より勝る者を喜ばないし、自分より才ある者には嫉妬をする。
このようなことでは今賢人に遭ったとしても、
千年をかけたとしても、一人の賢人をも得ることはできないだろう。
だが、賢人を得られなければどうして国が治められるだろうか。

是以五百歳之後。乃今遭賢。……がよくわかりません。
嫉妬の心を持つ者が賢者に遭ってもその優れた様がねたましく
思えるばかりで助力を請うたり、教えを請うたりすることなど
できないからってことでしょうか?
で結局優れたものは優れていると認められる広い器を持てって
ことでいいのかな。でも難しいこってす。



十五に曰く私に背き公を向くは是れ臣の道なり。
凡そ人に私あらば必ず恨み有り。恨み有れば必ず固まらず。
固まらざれば則ち私を以て公を妨ぐる。
恨みを起こせば則ち制を違い法を害す。
故に初めの章に云う上和下睦。其れまた是の情(こころ)か。

職務に際して私情を捨てて公人として臨むのが臣の道である。
私情をもって物事に臨めば恨みが湧く。
恨みがあれば、物事はうまくまとまらない。
それは、要するに私情が公務を妨げるということだ。
恨みは制度を歪め法を侵す。
初めの章に掲げる上は和し下は睦むの心がけは、ここにも通じる。



十六に曰く、民を使うに時を以てするは古(いにしえ)の良き典(のり)なり。
故に冬月に間あれば以て民を使うべし。
春従(より)秋に至るまで農桑の節なり、民を使うべからず。
其れ農せずば何を食し、桑せずば何を服とす。

民を使役するならば、時期を考えてするべきである。
冬の農閑期の間を見て民を使うのが良いだろう。
春から秋まで民は農事に養蚕に忙しいのだから使役するべきではない。
民が農事をせねば何を食べられる?
養蚕をせねば何を着ればよいのか?


民の働きに寄生してるという立場をよくわきまえた章だなと。
でもこうして書かれるくらいだから、実情は違ったんだろう。



十七に曰く大事は独断すべからず。
必ず衆と論を宜しくすべし。
小事是れ軽ければ必ず衆と(論を)すべからざる。(?)
唯(ただ)大事に論を逮(およ)び若し失有るを疑う。
故に衆と相弁ずれば辞(ことば)則ち理を得る。

大事な事は一人で判断せず多人数でよく論議をするべきである。
小さな物事についてはいちいち議論するには及ぶまいが。
大事は判断に間違いがないように議論をするべきだろう。
多くの人と論ずれば言葉は理路整然と説得力を持つものになるから。




読了。
群書類従の二十七巻雑部に収められているものをいいかげんに読みました。
正統な(?)読み下し文を知りたい場合は、日本書紀参照のこと。
推古天皇十二年。

やっぱり昔の人は偉いなぁと小難しい漢文については痛感。
歴史は不勉強ですが、役人の専横に相当苦慮していたのね……
となんとなく気の毒になるような条文が多いなぁ、と。
君は一人。対する役人は百官百僚というくらいなので、数からいっても
勝ち目ないですよね。いつの世もお役人様は強いらしい。


恵 |MAIL