白日の独白
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親友さんは音楽中毒者なものでお気に入りのCDをざらざらと貸して下さる。 だから僕のウォークマンは新しい曲でいつも賑っている。 親友さんに感想を言わないといけないから結構大変だけど。 それで最近のお気に入りの遊びは音のイメージから人格を作ること。 最近買った黒い手帳にイメージを書き込む。 音に合わせてキャラクターが動き出すのが大層面白い。 イラストを描くのも久し振りの事だ。 ねぇ、これって案外素敵なことだと想わないかな。
物腰は柔らかで穏やかに話すしとても優しい人だと想う。 彼が声を荒げたり怒りに震える姿なんて想像も出来ない。 だけど最初に話しをした時「怖い人だな」と想った。 微笑んでいる眼も囁くような喋り方も全部作り物めいていた。 仮面の後ろで一体何を見て何を考えているのが僕には検討もつかなかった。 それが最初に感じた『怖さ』。
彼と付き合うようになってわかった事がある。 確かに優しげな仮面はつけている。でもそれは本質じゃない。 彼には実体というものがない。考えや言葉が全然ない。 彼は周りの人間を少しずつ食べて自分を形作っているのだ。 しかも食べている事を知らずに最初から自分のだと想っている。
空虚であることに気付かない人は強い。 だから僕は彼が誰かに手酷く傷付けられればいいなと想う。 口も利けない程に駄目になった所が見てみたい。
「流され易いですね」とマスターは仰いました。 「情に流されない子よね」とお母さんは言いました。
それで考えてみたんだ。 『情には流されないけど状況には流される』 それが僕っぽい気がするけどどうだろう。
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