主なき研究室のテーブルを静かに包む春の陽だまり
光陰は矢の如しでもなすことは少なくならずため息をつく
菜の花に紛れながらも蝶が舞う春の陽射しの穏やかさ知る
祭果て心ひそかに四年後を期す人もあり去る人もあり
穏やかな春の陽射しに包まれてジャズにまどろむ休日の午後
匂い立つ蘭の香りを思いつつデータを打つ午後のひととき
静寂の中に沁み込む滝の音たしかに戻り春が生まれる
言霊という世の中であらねども言葉の力思い知りたり
歳時記で季節の流れ感じてる都会育ちの我の哀しさ
欠員が出て頭など痛めてる午後に限ってトラブル続く
はなびらのように白い波の花広がる海をはるかに想う
初恋の淡き想いを集めたる小さき花に心なごみぬ
街角で眼鏡を洗いいつの間に春の陽射しとなることを知る
似たような風景ふたつ少しずつ違う角度で切り取ってみる
恋という言葉も忘れひたすらに仕事に励む納期の間近
ひたすらにデータを眺めあれこれと不備の指摘の付箋を立てぬ
花粉舞う情報を見てはかゆみ増しくしゃみも増してなす術もなく
悪戯な風のたよりに導かれ辿り着きたる隠れ家ひとつ
凍てついた空気の中を淡々と走る姿をそっと眺める
あかあかと聖火が照らす祭典に集う笑顔の素晴らしさ知る
一枚の図面のためにあれこれと悩む時間の長さ知る夜
山深く訪ねてみたき心地する我が水源はどこにあるかと
積年の埃を払い穏やかな春の陽浴びる午後のひととき
穏やかに春の雨降ることにさえ気づかず画面眺め続ける
春きざす気配を感じ少しだけ蕾ふくらむ沈丁花かな
節分に心の鬼と向かいたる心地続きぬデータ見つめて
雲間よりミルク色した光射す雪の予報は当たるのかしら
白妙の富士の高嶺を眺めつつ冷え込む書庫の寒さを思う
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