初夏の陽気の銀座通り抜け紅枝垂咲く店先に立つ
花散らし去り行く人の肩に落つ花びらひとつ闇に浮かんで
縁あればふたたび出逢うこともある信じてやまぬ年度末かな
完了の一言だけで今までの苦労が消える春の宵かな
春雨に散る花びらを眺めつつ後片づけする一日となる
ドリンクを片手に今日も残業でため息ひとつつきたくもなる
群集のひとりとなりて松林に吹く風を聴きしばし佇む
春雷の轟く中もひたすらに報告書書く仕事であれば
車窓より眺める桜うっすらと花曇り空染め上げており
満開の桜を見上げ次年度をひそかに期して友と語らう
春分ということ忘れ終日報告書打つ一日となり
追い込みで弥生の刻は倍速で流れることを感じてやまず
追い込みの修羅場を迎え部下たちの背中の広さふと感じて
彼岸入り蕾を抱く桜花日に日に数を増していきけり
はんなりと春の陽射しを集めたる菓子を求めてしばし寛ぐ
笛の音がひとつの時代終わり告げ新たな道を探し始める
退職をいきなり部下が告げる中春一番は通り抜けてく
マシュマロのような想いもあればこそ今日のこの日を少し気にする
春の宵ひたすら君と仕事して夢を見る暇ないことを知る
限りある光に背伸びする花のいじらしさなど君は知らない
懐かしい唄の調べとともにある徹夜の記憶今も鮮やか
春眠のけだるき中に明日からの仕事のことを思い続ける
世の中は割に合わないことばかり仲間はずれの部下は呟く
流星の流れる空を想いつつ笙の調べに身を委ねたり
春燈帰れぬ君のため息を映して曇る空を仰げば
啓蟄や眠りのさめた部下ひとりエースのオレに任せろと言う
腰鈴の音はんなりと遍路坂たしかな歩み告げて響けり
ひとかすみ遠くの峰にかかるときおだやかになる心見つめる
桜餅はんなりとして春の陽を集めて甘き香り残しぬ
鮮やかにシュートを決めて振り返るはにかんだよな君の微笑み
弥生はや仕事の山に挑みたる部下の横顔きりりと締まる
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