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2002年06月03日(月)
「真夜中のパーティー」


「 ビスケットのかけらたよりに
  あまいお菓子の わが家へ
  きっとなにもかもそのまま
  朝でかけたまま おいてある
  
  気にならないほどの 時間はあるから 踊りましょう
  夜毎くりかえす ふたりだけのパーティー 森のなか 」



         小島麻由美 「真夜中のパーティー」から




真夜中にわたしの部屋へ
ゴキブリあらわる。

一匹いれば三十匹いるといわれるこのコ達は
だけど家ではほとんど見ない。
おおよそ2年に一度会えるかどうかの遊撃隊だ。

そしてわたしは所謂、情けない。
虫を叩き潰すなんてしたことがない。できない。
蚊を手で叩くのもおそろしい。

しかし、いまこの部屋にいるのは
この2年に一匹ちゃん、とわたしだけ。
共存か、戦闘か。
わたしは迷わず戦うことを選んだ。

右手に掃除機。
左手に汗。
静かな部屋は時計の音だけになって、緊張感を誘うので
テレビをつけておくこと(できればバラエティ)を忘れずに。


隠れたままの棚の陰をにらむこと
はや、2、30分。彼らに時間は関係ない。
まさかわたしの気付かぬうちに、ここをとっとと脱出して
背後から、この愚かな背中をあざ笑っておるのか。
いや、そんなことはない。ないはずだ。ないと思いたい。
よもや朝まで続くのか、と思い始めたそのとき。

かさかさかさか。。

すかさず
ずぼ。

2年に一匹ちゃんは、あっけなく掃除機のなかへ。
ふっふっふ。なんとも他愛ないものよ。
光もなく出口もなくそのまま、窒息してしまうがいい。

緊張感の抜けた拍子に調子にのって
悪役を演じてしまうわたくし。

念のためスイッチを5分程つけっぱなしにしてから
掃除機を廊下へ出して、ミッション完了。

消極的ではあったが
勝ち負けでいえば、おそらく勝ちだ。