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2002年06月04日(火)
ときどきふと思ふ

65歳だった。
怠けたりせずひたすらでもなく
どこか曖昧なままこの齢をむかえた。

あとは世に言う濡れ落ち葉。
老人、となったこの胸には
役職も学歴も貼ってなど歩けない。

妻は定年離婚、あとの人生は自由に、と考えはじめて
息子も娘も自分ひとりで育ってきたような顔をして
連絡ひとつよこさない。

会社にささげたか、家族にくれてやったかこの人生。
いったい何だったんだろう。

その年の夏、私はある乱暴なトラックに轢かれて
その生涯を閉じた。


けれどそのとき、閉じゆく視界に誰かがいたような。
もう一度だけ、と誰かに言われたような。
契約書かなんか持ってて。


そしたら21歳の僕だった。
今度こそ好きなようにやってみていいよ、って。




てなことをときどきふと思ふ。

それから3年経ったのがいまのわたし。
なんてのはどうでしょう。