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2002年08月19日(月) ■ |
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うたた寝の食卓(2) |
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僕たちの秘密基地が そこらにあったのと違ったのは 広さや設備だけじゃなくて テントのなかに猫を飼っていたという点だ。
チャトラン(茶トラだったのとその頃「子猫物語」という 映画がやっていたので)と シロ(白かったから以外に理由なし)という2匹。 大学の裏にダンボールに入れられて捨てられてたのを 拾ってきたのだとヒロキくんが教えてくれた。
僕とヒロキくんは毎朝学校がはじまる前に 2匹にエサをやりにいった。 バケツのなかにエサをたくさんいれておいても ウジ虫が湧いてしまったという痛い経験があったから。 ある雨の朝に秘密基地に迷い込むように 犬と散歩してたおじいさんが にぼしを分けてくれたこともあった。
そして学校が終わると大急ぎで 2匹に会いにいった。
けれど夏だったか秋になった頃だったか 秘密基地は突然陥落することになった。 隣りの家から子どもの遊び声がうるさいと苦情がでて 警官が来てしまったのだ。
リーダーが必死に訴えるがそれは無理で 隣りの家の2階から おじさんがカーテン越しの僕たちを見ていた。
それから僕たちはテントは後回しにして 2匹の猫をかかえて町を歩き回った。 新しい住処を探していたのだけれど 猫をおいておけるような基地のスペースが 東京の住宅地のなかでそうそうあるわけじゃない。 日が暮れて、ついでに途方にも暮れて 結局、近所のアパートの物置き場のなかに 2匹とエサを置いて、明日また探そうということになった。
次の日、2匹はそこからいなくなっていた。 商店街の猫をたくさん飼っていた八百屋さんに飼われていたのだ。 新入りの2匹は他の猫に苛められていたようで 発見したときは傷だらけだった。
その八百屋さんも店をたたんでどこかにいった。
そして僕はそのことを学校の作文で書いて 先生に「大人になっても覚えていたら、きっと素晴らしい思い出になるわね」 と言われ 「うん…」と気のない返事をしたのだ。
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