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| 2009年02月02日(月) ■ |
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| バスタブの離陸 |
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一旦、火が入ると 約千七百倍の湯気を噴き出しながら バスタブは乗客を待っている
お風呂という乗り物は動かないけど 動かないままどこへでも行く 離陸の間、ぐっと目を瞑り 歯を噛み締めている乗客の喉から ゆっくりとながい息が吐かれてやがて 手足から緊張がほどけでる頃には
バスタブはすでに滑走路を離れている 砂漠を渡り森をかすめ 観覧車を斜めに横切って あとはもう重力に縛られたりはしない 自家発熱しながら人工衛星に 寄り添ったりして
ほら、湯気まみれになった 小窓の向こうには とっくに遠くへ置き去りにされた オートバイの音が聞こえるだろう
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