妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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【監督:ニール・ブロムカンプ アメリカ】
新機軸のエイリアン物。 侵略物とか、地球の危機を救うといった話しなら全然興味なかったんだけど、難民としてエイリアンを受け入れ、それを隔離しているのが第9地区、しかも舞台は南アフリカ、と聞くと俄然興味が湧く。
ドキュメンタリー風に撮られていて、エイリアンたちが難民としてやってきてから20年経過し、ついに住民たちとの衝突が激しくなってきたため、エイリアンを人間の居住区から遠い第10地区に移住させることになるというところから始まる。 NMUという世界規模の企業がエイリアンの移住を取り仕切っていて、主人公はそこの社員であり、移住の責任者。
エイリアンはエビと呼ばれているが、実際エビとゴキブリの中間くらいの見た目・・・好感は持てない感じ。 言葉もそれほどはっきり通じてはいない。 殺人や強盗もするし、あまり道徳的でもないし、友好的でもない。知的な感じもしない。 エイリアンからの視点が一切ないので(クリスの視点もあるがあまり一般的エイリアンの視点とは言えない)、何を思って地球にいるのかは全くわからない。 あんなでかい宇宙船飛ばせるんだから、もう少し知的水準が高くても・・・と思うんだけれど、その辺は冒頭に幹部連中ではない、という推測が挿入されることで説明になってるのかと思う。 蟻、みたいな感じなのか。
主人公のヴィカスはエイリアンのDNAに変質してしまうウイルスに感染して、人間に追われる身になるのだけれど、ヴィカス自身がいい奴でもなんでもないところがいい。 エイリアンにも人間にも肩入れできない。 ただ姿かたちが同じだけで、どっちかといえば人間寄りに見てしまうけれど、やっていることのえげつなさは人間の方が酷い。 ヴィカスが人体実験されるくだりは、いくら感染してもそんな早急なやり方で実験されるか・・・?と思ったりもしたけれど、国家じゃなくて、一企業のやることだと思えば、それなりにリアルなのか。アンブレラ社みたいな(それもリアル企業じゃない)
ラスト、この後第9地区がどうなっていくのか、クリスは戻ってくるのか、色々と考える余地があっていいと思う。 どこにも正義はなく、正解も提示されず、それでもきっかり娯楽してる。 爽快とまではいかないけれど、なかなかおもしろかったです。 でも正直、感染してからはヴィカスがゴッドハンド(モンスターエンジン)にしか見えませんでした。
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