妄言読書日記
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2011年05月18日(水) 『ゴールデンスランバー』(小)

【伊坂幸太郎 新潮文庫】

首相暗殺の濡れ衣を着せられた一般人の話し、というのはまあ、よくあるのですが、全貌が見えない組織の巨大さよりも、どんどんと社会の空気が青柳が犯人であるという方向に向いていく様が怖い。
そしてそういう空気というのは大きな事件が起こると、本当によく見る。

あいつが犯人だという空気に染まっていく中、青柳が過去に関わった人たちが皆、青柳を信じているのが救い。
そしてまた、そんな状況でも「人間の最大の武器は信頼なんだ」と言える強さに感動する。

ラストは真犯人が捕まって濡れ衣が晴らされるという他の作品のパターンからすれば、物足りないかもしれないが、これがどうすることもできない巨大な陰謀に巻き込まれた一般人が得られる最大の勝利だったと思う。



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