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沙夜



 ホームにて

沙夜が泣くから、ここでいいよ。

あはは。
泣かないよーだ。



彼が帰ってゆく時。
いつも改札口でさよならしてた。
今まで一度も、ホームでのお見送りはしたことがなかった。


この日。
駅に着いた時、出発の時間まで30分近くあった。


今日は、ホームでお見送りしちゃおうかなっ。


少しでも彼と長くいたいという気持ちが、自然に言葉になった。




席に座ったら窓にハートマーク書かなきゃ。

ぷ。なにそれ。
息をはーってして、ハート?
中に沙夜とか書いちゃうわけ?


そうそう。
で、電車が走り出したら、沙夜は走って追い掛ける!!


やだ〜。
転んだりして。



照れ隠しするかのように、ホームで冗談ばかり言い合う。


出発ギリギリだというのに
なかなか乗り込もうとしない彼を焦って押し込む。


アナウンスの声が響く。


彼の口がぱくぱくと動く。


え?なに?
聴こえないー。



口の動きで何を言っているか分かった時。
思わず私は吹き出した。


あーあ、笑われちゃったよ。


扉が閉まってゆっくりと走り出す。
彼は「ほら、走って」とジェスチャーする。
私もおどけて、少しだけ走る真似をする。


笑顔でさよなら。
大丈夫。泣いたりしない。


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2003年03月15日(土)
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