in love with...
沙夜



 ごたごた。Hくん。

一週間後、S子から電話があった。
その後も何度か。でも私は出なかった。


私がS子を避けていると分かると、留守電にメッセージを残していった。


「私の家の合鍵を持っていると思うんですけど。
 こちらに送って下さい!」


以前は彼女の家に頻繁に出入りしていたので、
私は彼女の家の合鍵を渡されていた。
この1年4ヶ月、返さなくては思いながらそのままでいた。
私の態度に対しての彼女の要求はもっともだ。


S子がこのメッセージを入れたのが、土曜日。
私が聞いたのが、日曜日。


(月曜日に送ろう)


しかし日曜日の夜に再度、電話&メッセージ。


「留守電のメッセージは聞いて頂けたんでしょうか!?
 もし未確認なら電話下さい!」


(確認しましたよ。明日送りますよ。ちょっと待っててよ)


と、心の中でつぶやく私。
S子は、相当イライラしているようだった。


月曜日、再々度電話。
この日は留守電をセットしてなかったので、メッセージはなし。


(今日、簡易書留で送ったから、明日には着くってば)


私は電話が鳴る度に、びくびくしていた。






夜、Hくんから4ヶ月ぶりの電話があった時、
私はまっ先に『S子のことだ』と思った。


「もしもしっ、どうかした?」

「あ、いやー、S子さんがさー、合鍵を返して欲しいとか言ってて」

「うんうん。合鍵ね、今日送ったから。明日には着くと思う」

「沙夜にちゃんと伝えたら、折り返し電話しろとか言われてさ」

「そっか、ごめんねー。Hくん、関係ないのに巻き込んじゃって」

「別に沙夜が悪いわけじゃないから、謝ることないけどさ」

「でも、Hくんにそんな電話するなんて……」

「最近ちょくちょくかかってくるよ。
 仕事中だろうが、家にいる時だろうが、おかまいなしで。
 かけてくるのはいいんだけど、話が長いんだよ〜」


(ふーん。かけてくるのはいいんだ)


Hくんが奥さんのことを冗談ぽく愚痴るので、私は思い切って
去年奥さんからメールが来たことを話した。


「へー、あそう?
 どんなこと言ってた?」

「逃げ出してしまいたい、とか。私はひとりぼっちだ、とか。
 かなり我慢してるみたいよ? 大丈夫なの?」

「波があるんだよね。昨日からまたプチ落ち込みしてる」


Hくんのメールをチェックしたり、別れると言ってみたり、
今も不安定らしい。


「私、内緒でメールしてる罪悪感があって。
 3〜4回やりとりしてたら落ち着いてきたみたいだったから、
 それでもうメールを止めたんだけど」

「……ま、別にいいけどね。内緒でメールしてたって」


Hくんは突き放すように言った。


「夫の言い分、妻の言い分とかあるだろうし。
 色々大変だろうけど、頑張って。……それじゃ」

「はい、じゃあ」


15分くらい話をして、切った。



2004年02月18日(水)
初日 最新 目次 MAIL

※my登録を「告知しない」に変更しました※