Sports Enthusiast_1

2008年08月28日(木) 日本プロ野球機構は読売の興行部門

来年3月、野球のワールドカップに比肩するWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)アジア・ラウンドの東京開催を前にして、北京五輪で惨敗した野球日本代表監督の座をめぐり、日本の二大新聞社が戦争を始めた。

WBCアジア・ラウンドで、日本代表が勝ち残れば、本戦ともいうべき2次リーグ(アメリカ開催)に進める。アジア・ラウンドは、日本が北京五輪で2敗した韓国が最大のライバル。ここで日本(ホームという有利な状況で)が韓国に負けるようであれば、日本プロ野球はアジアの王者の座を完全に失うばかりか、漸次的人気低迷に拍車がかかり、その命運は尽きたも同じである。

日本のプロ野球の命運をかけたアジア・ラウンドを主催するのが読売新聞社。渡辺同社主が日本代表監督に星野を押し、読売のライバル朝日が自社の週刊誌を使って、「反星野キャンペーン」をはった。そんなとき、老獪トリックスター・野村楽天監督が登場、場の混乱に拍車を駆けた。星野監督批判から態度を一転、「星野監督、野村ヘッドコーチ」構想を自らマスコミにぶちあげたのだ。

そもそも、日本プロ野球は、読売新聞社が自社新聞の販売拡大を目的にした興行を起源としている。読売球団の創設と現・日本野球機構(NPB)の設立は一体的だ。野球は相手がいなければ成立しないから、読売球団の設立と同時に、その意を受けた球団が読売の相手として設立された。それまで日本にはプロ球団がなく、大学野球が人気の中心だった。とりわけ東京6大学リーグは人気が高く、早慶戦が同リーグの花形だった。

読売は野球の娯楽としての潜在力を見抜き、人気選手を読売(巨人軍)に集め、巨人軍を人気球団に仕立て上げ、プロ野球を発展させた。そんなプロ野球であるから、巨人軍の利害とNPBは分離できず、巨人軍のためのNPBという構図を脱却できないまま、今日に至っている。このことは、有力なプロレスラーが自分のプロレス団体を旗揚げするのと同じ構造だ。日本のプロレス界は、力道山亡き後、有力レスラーが次々とプロレス団体を設立したが、読売はいまだ「力道山プロレス」の構造を維持し続けているというわけだ。

他のプロスポーツ団体は、興行組織から近代的スポーツ団体への脱皮に成功している。その良い例がプロサッカーで、日本サッカー協会はプロリーグであるJリーグを傘下におき、プロ、アマを含めたサッカースポーツを統合する機関として、中立性を保っている。サッカーの場合、世界のサッカーを総合的に管理するFIFAの存在があるから、FIFAの利害と対立するサッカー運営は事実上、困難な状況にあるが。読売と当時の川淵Jリーグチェアマンとの確執は記憶に新しい。

世界のプロ野球は米国メジャーリーグ(MLB)が強力で、世界的な統合機構を必要としていない。野球がそもそも、北中南米と東アジアに遍在したスポーツであり、MLB以外はすべてマイナーという認識をMLBがもっており、ユニラテラリズム(単独行動主義)が貫徹している。WBCの開催は、サッカーに遅れをとっているMLBがサッカーワールドカップ開催を手本として、遅まきながら、野球の世界普及を目指そうとする後発的発想にすぎない。

さて、北京五輪野球日本代表=「星野ジャパン」の派遣に当たって読売は、本来、統括機構であるが事実上は下部組織に過ぎないNPBを使って、�.蝓璽鯵�催期間中にも関わらず各球団から有力選手を日本代表に招集し、�◆嶌廼�」星野ジャパンを組成し、�K無�五輪金メダル ⇒ WBCアジア・ラウンド突破 ⇒ 2次リーグ進出(米国開催)、WBC二連覇達成――の結果を受けて、�ぅ錙璽襯疋船礇鵐團�ン監督に輝いた星野を読売巨人軍監督に招聘する、というイメージを描いていたはずだ。

ところが、このシナリオは、北京五輪メダルなし、帰国後の星野バッシングという最悪の結末により、早々と崩れ去ってしまった。読売としては、ここで世論に屈して星野を監督の座から下ろせば、これまのシナリオが完全に崩壊する。読売は、プロ野球の盟主の座から、すべり下ろされかねない状況にある。読売としてはあくまでも、星野代表監督で押し通し、自らが主催するWBCアジア・ラウンドで、「北京のリベンジ」を星野にさせたいところだろう。

重要なのは、星野を代表監督として続投させるか否かではない。▽文化としての野球というスポーツを統括する真の機関が日本に存在しているのかどうか――▽そのような統括機関の制御の下、日本プロ野球機構が国民に健全な娯楽である野球という文化を提供しようと機能し活動しているのかどうか――なのだ。NPBのトップ(現在は加藤良三コミッショナー)には、各界の重鎮だった者が座ることになっているようだが、これまでは「名誉職」の域を脱していなかった。読売の意向を忠実に履行する“ポチ”にすぎなかった。

このたび、NPBが独自の判断で、星野代表監督を決定することはかまわない。ただし、北京五輪で問題となった星野のコーチ人事、選手選考、選手起用、采配、マナー(星野は大会中退場処分を受けている)について熟考を重ねたうえで、そのような結論に至ったということを、世間に向けて説明することはかなり困難だと思うが。

読売巨人軍人気の低迷、読売巨人軍戦のTV視聴率低下、星野ジャパンの五輪惨敗・・・という、野球に関するネガティブな事象の顕在化は、これまでの読売一国主義の終焉の予告にすぎない。野球関係者にいま求められているのは、野球が読売の興行部門から真に独立し近代化するかどうかの瀬戸際であることを自覚することだ。たとえば、読売とは無関係に北海道の人気球団になった日ハム、同じく九州のソフトバンク、千葉のロッテ、仙台の楽天と、近代化の兆しはパリーグにおいて目覚しい。このようなニューウエーブに乗るのか、それとも読売興行に残るのか、プロ野球のあり方がいま問われている。

結論をいえば、渡辺読売新聞社主が「続投」を明言しているとおり、五輪惨敗の星野がWBCの日本代表監督を続投するのであれば、NPB―すなわち日本のプロ野球の統合的な機関――が、読売の興行部門に属しているままだと解釈できる。普通に考えれば、あれほどのヘボ監督が惨敗後も代表監督の座に居座ることなど考えられないのだから。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram