| 2014年02月04日(火) |
最近のプロスポーツ業界の話題を斬る |
2013〜2014にかけて、日本スポーツ業界を揺るがす大きなできことが続発したのでまとめておこう。
(1)田中将大投手のMLB移籍と新ポスティング制度
楽天の田中投手が、新設されたポスティング制度を使ってMLBニューヨークヤンキースに移籍した。田中の契約金・契約内容はそれまでの日本人プレーヤーの記録を塗り替える、莫大な金額と待遇となった。たいへん結構なことだ。それだけ期待が大きいと喜びたいところだが、それですまわけにはいかない。
まず、新しいポスティング制度について――日本プロ野球選手会(選手会)のポスティング見直しの提案が田中の破格の契約金の発端になったと一般的には言われている。選手会の要望は、�‘�本の球団に支払われる移籍金をおさえ、その分を選手の契約金アップの原資に充てるようにすること、��日本人選手が複数の球団から契約オファーをもらい、その中から意中の球団を選べるようにすること――であり、その両方ともがMLBと日本プロ野球機構(NPB)双方の合意を得、新ポスティング制度として発足したように見える。つまり、田中は選手会の要望通り、意中の球団に多額の契約金をもって移籍できた、すなわち、選手会の全面勝利の結果のように見える。ところが、選手会はこの間NPBに対し、FA期限の短縮を求めなかった。筆者が気にかかるのはこの部分だ。
筆者の直感では、田中の今回の破格の契約をもって、NPBからMLBに向けたポスティングを使った移籍は最後となるような気がしている。
その第一の理由は、新ポスティング制度はNPB球団になんの利益ももたらさないからだ。NPB球団は日本人プレーヤーを育成するだけして、低額の移籍金を得るもののMLBに選手をもっていかれてしまう。その結果、利益を得るのは日本人選手とMLB球団であって、NPB球団ではない。
では田中投手の移籍をなぜ、楽天球団が認めたのか――と言えば、親会社楽天が企業イメージを守らざるを得なかったからだと推測する。楽天は言うまでもなく、ネット通販で成功して球団をもつまでに至り、その後、M&Mを活用して金融業等多種の業界に進出を企てている企業。つまり、“挑戦”“斬新さ”“国際化”といったイメージを前面に出しているところだ。社内公用語が英語であることもよく知られている。
そんな楽天が、田中を手放さなかったならどうなるのか――世間の非難を浴びることは火を見るより明らかだ。世界に挑戦する若者の道を塞ぐのかと、楽天の企業イメージは地に落ちる。しかも、「がんばろう、東北」の世間の風が楽天球団をリーグ優勝から日本シリーズ優勝まで吹き続け、その結末として田中のMLB挑戦(世界挑戦)が既定の事実となっていたことも忘れてはならない。田中を拘束して田中の世界挑戦を阻み、世間の風を楽天が裏切るリスクはあまりにも高い。楽天の企業戦略として、田中の移籍金で多少損をしても、企業イメージを守ったほうが、否、企業イメージを高めたほうが、よほど得となるという計算が働いておかしくない。
つまり、田中が新ポスティング制度を利用して移籍できたのは、楽天という企業のおかれた特殊性と日本一の次は世界だという世論の後押しを受けてのこと。このような事例はおそらく、数年の単位ではなく、数十年の単位でしか起こりえないと筆者は思う。
二番目の理由は、田中投手のような才能がNPBに見つからないからだ。田中投手に追いつき追い越す才能を持っているのは言うまでもなく、日ハムの「二刀流」大谷翔平だ。大谷はいまのところ、NPBのなかでMLBに最も近い距離にいるプロ野球選手だが、大谷が所属する日ハム球団の育成システムを2013シーズン見た限り、ほとんど素人レベルに近い。日ハム球団が話題性=人寄せパンダ(二刀流)として大谷の才能を一年間浪費させてしまった。このような状態が2014シーズンに継続するとなると、大谷の才能は伸びないばかりか退化する。大谷が日ハム球団にいるかぎり、大谷はMLBに行けないままプロ野球生活に終止符を打つことになる。ということは、田中がいなくなった現状のNPBにおいては新ポスティングでMLB移籍を果たすことのできる選手はここしばらく、出てこない可能性の方が高い。広島の前田健太もいい投手だが、フィジカル面で不安を残している。
選手会はFA権取得期間の短縮を「闘争テーマ」として下ろしてしまったので、現状維持がしばらく続く。つまり、選手会は田中の個人資産を高めることに寄与したものの、それはNPB全選手の利益を損ねる結果を招いた。誠に残念。選手会はMLBへの道を自ら狭めた。
(2)サッカー本田選手のACミラン移籍
本田圭佑の移籍金は田中とは異なり、ゼロだったという。本田がミランと破格の契約金を交わしたとも報道されていない。入団会見は大げさだったものの、契約内容としての規模は小さかったようだ。
さて、本田はセリエAの名門チームで成功するのだろうか。すでにリーグ戦でフル出場を果たしておりアシストも記録しているし、カップ戦では格下相手とはいえ、得点も上げている。順風満帆のようにも見えるが、筆者にはそれほどの活躍は望めないように思える。その理由はフィジカル面にある。アジアレベルでは彼の強さは際立っているが、セリエAでは並程度。スピードがないぶん、総合的にみたフィジカルの強さは平均レベルにとどまる。移籍して間もないいま、本田は出場時間全力で走り続けているし、この先もそのつもりだろうが、彼がいまのままエンジン全開でリーグ戦を戦い続けたとしたら、あと10試合以内で故障する。移籍から何試合かは結果が出ても、シーズンを通じてどうなのかという視点で見守りたい。
(3)Jリーグに海外大物選手が久々加入
ダウンサイジングが続くJリーグにあって、朗報だ。セレッソ大阪にディエゴ・フォルラン・コラソ(34歳)が加入した。彼はウルグアイ代表の中心選手であり、ヨーロッパ・ゴールデンシューを2度受賞しているストライカー。サッカーウルグアイ代表の最多出場記録保持者であり、2010FIFAW杯でMVPに選出されている。
フォルランがなぜJリーグ移籍を決めたのか、筆者にはわからない。Jリーグの初期、いわゆるバブル期までは、フォルランのような移籍は一般的だった。ところが、バブルがはじけた最近のJリーグは、海外大物選手から見向きもされなかった。最近の南米の大物選手は欧州に渡り、そこで満足な契約に至らなかった場合は南米に帰るか、トルコ、米国、中東産油国、中国にわたるケースが多かったように思う。だいたいそこで現役を終わる。ところが、フォルランは南米(ウルグアイ)→欧州(イングランド、スペイン、イタリア)→南米(ブラジル)を経て、(おそらく)現役最後の地として日本を選んだ。フォルランのようなケースは異例だ。いずれにしても、直近のW杯の得点王・MVPがJリーグでプレーをするのは楽しみだ。このような移籍が活発に実現するようになれば、Jリーグも再び活況を呈するだろう。
さて、フォルランはJリーグにフィットするのか――だが、どうも活躍してしまいそうな気がする。というのは、JリーグのDF選手は「伝統的に」名前負けする傾向が強いからだ。相手が代表選手や知名度の高い選手であると遠慮してしまい、強いチャージをかけない傾向がある。J発足から数年前までの間、毎年のJリーグの得点王が外国人選手で独占されていたことは記憶に新しい。ブラジル代表の経験のあるくらいのFW選手ならば、まちがいなくJリーグで得点王だった。だから、フォルランが容易に得点を重ねるような気がしてならないのだ。
しかし、それではJリーグのレベルは上がらない。JリーグのDF全選手は、表現は適切ではないが、削ってでもいいからフォルランを止めてほしい。フォルランにJの洗礼を与えてほしい。少なくとも、フォルランの個人技だけでやすやすと得点されるようなシーンは見たくない。
いずれにしても、Jリーグは経営努力と称してチームのリストラに注力しすぎである。合理化ばかりで、投資をしない。積極経営を怠っている。
新外国人選手と契約と言っても、実際は韓国リーグ、中国リーグで実績を残した選手ばかり。アジアレベルでの移籍で新鮮さがない、安全優先なのだ。さらにJリーグで実績のある外国人をぐるぐる回し合っているばかり。
Jリーグ最大の経営レベルを誇ると言われる浦和でさえ、優勝チームの広島から選手を引き抜くだけ。育成力もなければ、グローバルな投資もしない。これではリーグがやせ細るだけだ。
セレッソ大阪に続き、フォルランクラスの大物を全クラブが呼ぶような経営努力をしなければ、前後期制度にしたところで、先細りは阻止できない。そもそも、二部制度というのは、「決定戦」という名の冠イベントを増やす大手代理店主導の制度であることは見え透いている。代理店は冠がつけば収入の道が開けるが、リーグが先細っていればイベント試合の魅力は高まらない。イベント志向のプロスポーツが継続的に繁栄をした事例はない。地域密着でリーグ基盤を固め、グローバルな視野でいい選手を集め、リーグを活性化させなければ、Jリーグの魅力は高まらない。
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