ホトケノザ

私のうちの前に犬がいた。名前はチビ。
飼い始めた当初はとても小さく、そこからつけられた名前だが、後に結構でかくなってしまい、名前がどうも姿と不釣合いであった。
彼はとてもよい番犬であったから近所でも結構評判のいい犬…だったと思う。

そんな彼も去年の5月に天国に逝ってしまった。
ガンである事は知っていたが、ある日急にいなくなってしまったのだ。
姿が見えないから「そろそろなのかなぁ…」と母に言ったら
母は飼い主であるお向かいのおじいちゃんに聞きに行った。

彼は家に入るのが嫌いなのでいつも外にいる。散歩以外でそこを離れることはありえないのだ、絶対。


「チビは死んじゃったらしいよ。精巣ガンと腎臓ガンだって」

わかってはいても辛い知らせだった。
大事なテストの勉強も手がつかないくらいだった。
家に帰ってくるとき必ずチビに挨拶してから家に入った。
彼がいなくなってからもそれを続けてしまう自分がいた。

彼がガンを持っていることは結構遅くに知った、歳のせいもあってもうほとんど治療はしていなかった。
しかし、死期が近づくと彼の容態はさらに悪くなり、痙攣が起こってかなり苦しそうだったらしい。
見かねたおじいちゃんは獣医さんに連れて行ってこれ以上苦しまないようにと安楽死を希望した。
チビは眠るように死んでいったという。
私はそれを聞いて安心した。大好きな彼が苦しんで死んでいったなんて想像したくもない。

今彼のいた場所にはホトケノザが爛々と咲いている。
数ある雑草の中でホトケノザがその場所にポツリと咲いているなんて偶然とはいえちょっと運命を感じる。
彼はちゃんと天国にいけたということだろうか。
寒い日も暑い日もずっと外で主人の家や近所の家を守った功績を称えてのことだろう。

初めてホトケノザが綺麗な花だと思った。
2005年04月03日(日)

ヲタコンクリート / 木ノ本あんず

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