人殺し

最近イライラしてたのと、米国での連続多発テロ事件にかなりショック受けたのが多分原因だと思う。
人を殺す夢を見た。
思い出すと気持ち悪い。

旅館の娘の部屋の模様替えに、あたしともう一人同年代の男とバイトで手伝いに行った。
娘はデブでブスだった。
殆ど女将の母が仕切っていた。
男は女将に好かれているようだった。
あたしは嫌われているようだった。
何もしてないのに事ある毎に言いがかりをつけてきた。
もうあんた邪魔だからこれ持って出てってと、空の段ボール箱を渡された。
むかついた。

部屋を出て階段を下りると広い玄関に出た。
その玄関の手前一杯に、大きい布が画鋲で天井から止めてあった。
真ん中で別れていた。
画鋲が取れかかっていたのに気が付いて、椅子を持ってきて止め直そうとした。
失敗して画鋲が全部取れてしまった。
執事がにこにこしながらやって来た。
助けてくれるのかと思った。
けど執事はただ側で見ていて、そうじゃダメだとか口出しするだけだった。
直らない。
女将に見つかった。
何してるのと、凄い形相で歩み寄ってきた。
ホントに役立たずなんだからと言われた。
執事は相変わらずにこにこしていた。
むかついた。
強引にどかされた。
むかついた。
女将が布を張り直した。


いつの間にかバイトは終わっていた。
女将が自宅まで車で送ってくれている所だった。
白の軽自動車だ。
見慣れない景色だった。左側にはバイトで一緒だった男がいた。
男はいつの間にか私よりも先に降りていた。
外を見たら手を振っていた。
それまで穏やかだった女将の態度が一変した。
なんか嫌な感じだったから、私も此処でいいですと言った。
女将は車を止めて、手を出してきた。
8000円払えと言って来た。
一瞬、何がなんだか分からなくなった。
しばらくして冷静になって、あたしはバイトだと思い出した。
なんで払わなきゃいけないんだ、あたしが貰うはずだろと抗議した。
なんの役にも立たなかったんだから払えと言ってくる。
あんたのせいだろ。
むかついた。

結局、金は貰わなかったし払わなかった。
降りた場所はバイトで一緒だった男が住んでいるらしい寂れたアパートの前だった。
女将は暴言を吐き捨てながら車を走らせようとした。
その瞬間、あたしの頭の中が血で一杯になった気がした。
肩から手にかけて力が入った。
少し高いところに駆け上がり、走らせはじめた車に飛びかかった。
女将は慌ててハンドルを大きくきった。
車が道の端にぶつかって止まった。
あたしは手に椅子を持っていた。
レバーを引いて高さを調節できるよくあるタイプの黒いやつだ。
それで車ごと滅多打ちにした。
車は踊りを踊っているようだった。
まるで女将自身が車のように見えた。
叩いているうちにだんだん椅子が壊れていって、ローラーの付いた足一本になった時、あたしと車の動きが止まった。
あたしはそれを強く握りしめて、渾身の力を込めて車を殴った。
何回も、何回も殴った。
頭の中は相変わらす血で一杯のようだった。
もう車は動かなかった。
コンクリート上に、血が流れてきた。
生々しい色だった。
あたしは殴るのを止めた。
頭の中は真っ白だった。
ふと振り向くと、バイトで一緒だった男がいた。
叱られると思って怖くなった。
けれど男はあたしを叱らなかった。
その後肩を並べて男のアパートへと向かった。
女将を殺した事への罪悪感は無く、むしろ晴れ晴れとして妙な達成感に満ち溢れていた。
気持ちのいい晴天だった。


目が覚めた。

2001年09月16日(日)

にきにっき / にきーた