息子・タクが10才になった。
そのせいか
「年齢がひとケタからふたケタになったけれども、何かが大きく変わったっていう感覚はないな」
とか
「Rちゃん(12才の姉)は一応ブスじゃないと思うよ」
とか生意気なことを言うようになった。それはさておき誕生日を祝い、ワンパターンだがまた近所の回転寿司でゴハンを食べることにした。Rの誕生日の時もそうだったしそろそろ違うところにしたいのだが主役(タク)が絶対ココがいいと言うので…。
カウンターに座ると、内側には板前さんが数人いた。ネタより鮮度がいいんじゃないかってぐらい威勢が良く、特に僕らのほぼトイメンにいた一番近い板前さんはツルピカ頭にねじり鉢巻き、胸元の名札には「47才花嫁募集中!」と書いてあって、更に
「はいはいはいー、今日はカンパチいいですよー。3年B組カンパチ先生ー」
とか
「サンマいかがですかー、1、2、サンマ、2、2、サンマ」
とかひどいダジャレをポンポンかましてくるのでキャラが立ち過ぎていた。
さて、この店はあらかじめ会員登録をしておくと、子供の誕生日近くになるとおめでとうハガキが来るんである。Rの時も来たし今回もタク宛に来たのでそのハガキを持って行った。お店でハガキを渡すと特製船盛りをサービスしてくれるんである。そのハガキをダジャレ板さんに渡し、
「ご用意しますので少々お待ちください」
と答えられてからしばらく、突然しゃんしゃんしゃんしゃーん!というタンバリンの音がしたかと思うと
「店内の皆様、大大注目でーす!なんと、こちらの梶林タク君が今日お誕生日でございます!おめでとうございまーす!」
イエーイパチパチパチしゃんしゃんしゃん、とダジャレ板さんが店内の全員に聞こえるようにタクの誕生日を大々的にアピールするではないか。優しいことに数人のお客さんが半笑い顔で僕らに拍手をしてくれていた。
「はいどーぞ!」
テンションマックスで特製船盛りを手渡してくれるダジャレ板さん。マグロやエビ、サーモン他、子供が好きそうなネタのお寿司がてんこ盛りだ。タクはひきつった顔で受け取り、板さんが離れてから
「ボク、恥ずかしいよ、こんな風に言われるなんて聞いてないよ。フルネームで言われちゃったし…」
さすがに恥ずかしかったようで「勘弁してくれ」みたいな感じになっていた。
「おかしいなー、Rの時は普通だったよね」
「うん、そうだよ」
Rの誕生日の時にも来たんだけれども、その時はこんな晒し者にはならず、フツーに持って来てくれたんである。
「ま、あのダジャレ板さんのテンションが高過ぎるんだろうね」
そういう結論になった。
「ていうか、寿司ネタの横にタンバリン常備してあるってどうなの」
嫁も笑っていた。
そんな感じでちょっと戸惑ったタクではあったが食欲は衰えることはなく、来るたびに食べられる寿司ネタの種類が増え、平らげる皿の枚数も増え、成長の証が分かりやすく見える回転寿司での誕生日祝いも悪くはないかなーと思った。
「おなかいっぱい」
皆の食欲が満たされたのでじゃあお開きにしますか、ということになったのだけれども
「次はパパの誕生日(11月なんである)に来ようね!」
えー、勝手に決められてるー!
「いやー待て待て、パパは必ずしも回転寿司を食べたいわけじゃないぞー」
「じゃあ何がいいんだよ!」
僕の好みはどうでもよくて、自分の誕生日だろうが親の誕生日だろうがとにかく寿司を食う口実を得たい子供達の鋭いツッコミをうけだ僕はふと考え込んだ。
寿司はしばらく食わなくてもいい。かといって他に食いたいものというと…強いて言えばラーメンでもいいんだけど誕生日祝いにに家族でラーメン屋というのもなかなかブルース感がある。そんな舌が肥えてる僕ではないので定食屋でもいいんだがこれもやはり哀愁感漂うので
「うーん…そういやなんだろうねえ…」
迷った返答しかできなかった。寿司屋での問答なだけにネタ切れ。なんちて。
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今日もアリガトウゴザイマシタ。