lucky seventh
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2004年12月19日(日) one's own only




堕天にもっとも近き、天使がいた。
闇に染まりきることのできない、堕天使がいた。


















光と闇の世界のはざまで、そこに1つだけの存在がいた。


『誰?』


それは異形の姿をした異端の存在。
床にちらばる長い銀の髪、それだけが身体をまとわりつくようで、
衣服を何一つ纏わないその身体には、あちらこちらから不思議なほど透明で、
それでいてどこか柔らかな羽毛の翼が生えている。
そして何より、その翼には目のようなものがあった。

それはどこか孔雀の羽を連想させる翼だった。


『誰?』


無機質で、それでいて、どこか柔らかな音が聞こえてくる。
否、それは声とは違う頭に直接響いてくる声なき声。


「知らない。」


問い、返された言葉にその存在は首を傾げた。
その拍子にふわりと揺れる長い銀の髪の間に、
能面のように作り物めいた顔と、隠された剃刀色の瞳があらわになる。


『知らない?』

「そう、でも貴方は知っているよ。   セラフィム」


天使でも、堕天使でもない。
この世でただ1つ、たった1人の存在は笑った。


「セラフ」


その声に笑った。


















堕天にもっとも近き天使がいた。
闇に染まりきることのない堕天使がいた。

まばゆい金の光の加護も、
包み込む黒の闇の加護も、

その天使は得る事ができなかった。
その堕天使は得る事をしなかった。

それ故に、その存在はどちらにも受け入れられることはなく。
それ故に、その存在はどちらにもなれなかった。




そうして、いつしかその存在は忘れ去られていった。





ナナナ

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