lucky seventh
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そうやって、僕らはナァナァと生きてきた。
・弱い心を飼うケモノ・
見上げた夜空に紫煙が浮かぶ。 時刻は深夜、ここな眠りにおちたベットタウンのベランダで、 そこから見える風景に目を細めた。
「世界が眠りにつけばいいのに、」
片膝を抱え、地べたにすわりながら、そう独りでごちる。 片手には火のついた煙草、もう一方の手にビールを持って、 ただ、自分だけが起きているような錯覚を感じる。 それが現実になることはないのに、そうなったらと考える。 ほてった身体が夜風にあたる。 それだけでほんの少し心が軽くなる。 ふっと少しの間だけ、自分をしばる重圧から逃れられたような気がした。
「そんなことアルわけないのにな。」
そうしてほんの瞬きの間の解放の後に、 すぐさま地面にしばりつけられるような、そんな衝動。 自嘲する。
「らしくない…らしくないったらありゃしナイ。」
指で弄んだ煙草から灰がおちる。 その手を地面におろしグッと揉み消した。
「何やってんだか…」
片手をおろしたまま、抱えた片膝にことりと額をあてた。 冷たい夜風が気持ちいい。 目を閉じると、喧噪のかわり聞こえる草木の風にゆれる音、 これだけはいつまでも変わらない。 例えどこに居ようと、どこに行こうと聞こえる音に、 どうしようもない程の安堵を感じる。
「かえりたい。」
どこに?
「かえりたい」
あふれてくる感情に、こぼれる涙は何を意味するのだろう? 都会のせまい空のように、ベランダの外に広がる空はなんともちっぽけで、 あのオーロラのように広大な空を、 海に落ちる太陽の見える水平線にどこまでも続く荒野の地平線。 世界はこんない広いのに、見える風景はこんなにも狭い。 切り捨ててしまえば、もう泣くことはないだろう。 割り切ってしまえば、何かを失ってしまいそうで堪え難い。
「かえる場所、ココだろ?」
目を閉じると、見たこともない風景が広がる。 草木にゆらす風の音と、照らす月とほとんど見えない星々だけの世界が、 閉じられて見えない目の中に息づいている。
「かえる場所はココ(だけ)なんだ」
そうでなければいいのにと思ったのは、何度目だろう? 弱い心はここから抜け出すことも、 ここに治まることも拒んで、繰り返すだけ。
すべてが眠りにおちて、そして、自分1人だけ取り残されたら… この弱い心を受け入れることは赦されますか?
ナナナ
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