lucky seventh
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綺麗だね。雪みたいだ。 あの人は髪をひとふさ摘んで、言った。
・このシロで隠して。
雪を綺麗だなんて思ったことはなかった。 寒い冬の季節はビルのはざまで暖をとって、それでも冷える手先を 白い息を吹きかけて、ただただ耐え忍んでいた。 寒い冬という季節は、生きていく上でもっとも過酷な時期をしていて、 綺麗とかそういうんじゃなくて、ただ身体に降り積もる氷の欠片が 体温を奪い、眠ればそれは死を意味していた。
こんな風に唐突にそんなことを考えたのはあの人のせいだ。 あの人がふいに言ったあの言葉。 いつものように大きなソファーの上で本読むあの人が、 ふいに窓の外を見て言った。
「雪だ」
その言葉に隣にねそべりながらあの人の方を向いた。 だから、どうかしたの?くらいの気安さで。 目が合って、あの人を笑う。
「綺麗だね。雪みたいだ。」
そういって、あの人は髪をひとふさ摘んで、言った。 いつもの唐突な行動に戸惑い、 それ以上にそんな風に言われたのは初めてで、 どうすればいいのか分からなかった。 身じろぎも出来ずに、固まってしまった。
「雪はね。すべてを隠してくれるんだ。」
あの人はそういって笑った。
「あぁ、でもアレかな?」
そうしてあの人はさらに笑う。 よりいっそう、笑う。
「雪を欺くような」
そっちの方が似合うね。
いつだって消えそうな自分を、雪はさらに消そうとするかのように降り積もる。 けれどあの人はそのシロと同じくらい、白いと言った。
このシロでは隠せない。
ナナナ
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