lucky seventh
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2006年01月06日(金) 彼女の語る物語り・久遠 光と波の記憶。

ねぇ、母さん。
今日はどんな話しをしてくれるの?

足を伸ばした状態で
スカートのすそが汚れるのもかまわずに座る少女に少年が言った。
少女のような外見の彼女を母と呼び、
太ももと膝の間に甘えるように頭を乗せて、
そこから少女を見上げる少年。
彼女は笑う。
はんなりと。

そうねぇ。

見上げた空にまぶしそうに目を細めて、
飛び行く鳥に
 あの日、口笛を吹いて鳥を招こうとした青年と少女を思い出す。







今日はお伽噺になれなかった二人の物語を-----




それは美しい夢でした。

滅びたはずの場所のあの日の夢を繰り返す。

今となっては果ての住人の見た夢。

つづきは紡がれることなく、物語りがくぎれたあの日を迎えては 繰り返す。

そう、繰り返されるはずだった…夢

けれど、あの日、あの時、 少年は夢から現実へと訪れた。

夢の中の少年は何も知らぬまま、
誰かの物語りから 抜け出した。

そして、少年は少女に出会う。

世界を救うために旅に出た少女と。


少女は言った。

私はこの世界の 悪夢と言う名の夢を終わらせたいのだ。と。

少年は言った。

さめない夢などない。

それは明けない夜がないのと同じように。と。


数々の苦難が、少年と少女を襲い。
あまたの出会いが、少年と少女を導いていった。


そして知る。
少年は自身のことを

俺はこの世界の悪夢と同じものだ。と。

旅の中で少年は青年へと成長してゆく。

そして知った。
少女は己の使命を

私はこの世界の悪夢と共に最期を歩もう。

旅の中で少女は自らの運命を切り開いていった。


少年は悲しい覚悟をし
少女は哀しい結末を予期していた。


夢はいつか覚める。 それは今だと少年は笑って言った。
いつかさめる夢。 それを少女は望んでいたはずだった。


世界を救った後、そこには少年の姿はなかった。
ただ、少女だけがいた。


悪夢は終わった。

目をさました世界には 初めから、少年はいなかった。
目をつむったはずの世界は 少女には見ることができなかった。


だから、少女はあの日 夢見たつづきを探しにまた旅立ったのだ。

それは、少女の物語りの幕開けでした。









今日はここまでで おしまい。

少女は笑って、膝の上の少年に言った。
少年は不思議そうな顔で少女の顔を見上げる。


ねぇ、母さん。

なぁに?

まだ、物語りは終わっていないの?

そうねぇ、


少年の問いに 少女は少し間をあけて、


きっとまだつづいているんだわ。

そう笑った。
そして付け加えるように、


だからね、お伽噺にはまだ なれなかったのよ。  満足そうに言った。


ナナナ

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