lucky seventh
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2006年01月22日(日) 後悔の言葉なんて言わない。

健気なんて言葉はアタシには似合わないと思うの。
アタシは 我がままに生きて、我がままに死んでいく
そう言う人生が似合うって思うから、そう言う風に生きて 死んで逝くわ。














○。後悔の言葉なんて言わない。○。












バカみたい。
身分違いの恋だなんて最初から分かっていたじゃない。
それなのに淡い期待を抱いて、夢みるなんて。
あぁ、そうか分不相応ってこういう時に使う言葉なのよね。
まるでアタシのためにあるような言葉じゃない!
夢を見られただけ、きっとアタシは幸せなのよ…。
そう、そうに決まってる。
だから、もういいじゃない。
こんな時代でこんな幸せな夢を見れて、アタシはきっと三国一の果報者なのよ。
だからさ、もう夢から目覚めようか。
おしまいの時間だよ。


物語はめでたしめでたしで終わらなくっちゃ
誰も浮かばれない。

だからアタシは、このままひっそりと消えていくよ。










綺麗な指が目に付いた。
その女は美しい手を持っていた。
水場の仕事をしているはずなのに、その手には一切の荒れもなく
その指の先は、貝のような爪をしていた。
容姿はそれこそどこにでもいるようなまだ年若い女だったが、
その所為かどこか心の琴線を弾いた。

「名は?」

いきなり声をかけた男に、女は驚いたように振り向いた。
しかし次の瞬間、微笑み言った。

「小鈴(シャオレイ)と申します。」

その声はその名前と同じように、まるで小さな鈴の響きのようだった。



それが二人の出会いだった。



下働きから仕事から側使えのように働き出したいつの頃からだっただろう。

「小鈴」

男は女の名を呼ぶけれど、女は一度として男の名を呼んだりはしなかった。
否。
そんなことが出来ようはずもなかった。
男はそれがもどかしかった。
女はそれを分かっていたけれど、男のために呼んだりはしなった。

男がほんの少しでも酷いやつであれば女を手篭めにすることもできただろう。
女がほんの少しでも欲深くいられたならば、男と共に居続けることはできただろう。

互いを思いやる重い思いが二人を分かれさせた。

男はいずれその家にあった女を娶い、家を築き上げていく。
女はそんな男に死ぬまで仕え続けなくてはならない。
それが二人の現実だった。



けれど、女には男以上に分かっていた。
終わりを。
それは女のプライドだった。
せめてもの幕引きを、自らの手で降ろすことが女の自分への慰めであった。
たくさん人が死んでいく時代だった。
女もその1人だった。
ただそれだけのこと。

男は希望だった。
だから、希望であり続けるために男は何れ自分を捨てなくてはならなかった。




だから、女は最期に

「うそつき」

そう微笑んで死んでいった。









だから、女は男が自分の骸を抱いて
むせび啼いたことを知らない。
それは取り返しの利かない出来事だった。


ナナナ

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