lucky seventh
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2006年10月30日(月) |
君と巡る、季節・春。(前編) |
あぁ、まるで この世の地獄みたいやん。
少しずつ進んでゆく車輪が 地面に落ちた、絨毯のような花びらを轢いてゆく。 空からは季節はずれの雪のように 淡い、淡い花弁で、それでいてどこか燃えるような風景。
どうしたの?
わらった彼女に僕は尋ねた。
どうしんたんやろね?
わらっった彼女は答えにならない答えをしか返してくれなかった。
君と巡る、季節・春。
春になった。 彼女は相変わらずで、僕も相変わらずだった。 時折、繰り返される唐突な彼女の言葉にも大分なれてきて、 ほんの少しだけ、そんな風になれた自分と彼女の関係に そうして積み重ねてきた時間に、僕は胸が温かくなった。
いい天気やねー。
その日は彼女のお願いで急遽外への散歩へと出かけた。 見上げた空の青さに、彼女は猫のように目を細め 本当に気持ちよさそうに笑う。
あぁ、でも今日は風ちょい強いねんな?
たまにる吹く春の嵐に髪をかき乱され、 ぼさぼさになった髪を手櫛で整えながら、 それすらも心地よいというように、彼女はその日とても上機嫌のようだった。
なんや二人だけの世界みたいと違う?
まだ午前とあって 人気のない公園の中で、ふいに彼女は言った。
ほら、童話であった氷の女王やん!! よう覚えとらんけど、女王さんはお城に少年を攫って 二人で暮らそうとしたんよ!
笑ってそう断言する彼女に、 その話しをよく知らない僕は曖昧に笑って、
それなら僕は君に攫われたってこと?
返すと、
あぁ、それもいいやない?
思いのほか優しく、彼女はふわりと笑うから。 明るい日差しを受けた雪のようなその花びらを見て、
それもいいかもしれない。
僕もそう笑った。
君と夢見た場所、春。
ナナナ
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