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「物語ができるまで」とタイトルの付けられたファイルが出てきたので、どれどれと中身を確かめてみたならば。 *** 貴方に唆されて、何年かぶりに再びペンを握ったのは、ちょうどこの坂道を毎日通っていた頃だった、ということを、唐突に思い出したのです。きっと、貴方には話したことがあったと記憶しているのだけれど、幼い頃の私はペンと紙があればいつまででもひとりで遊んでいられるような子どもでした。それも、同世代の友人達が、きらきらした目をした女の子像をいかに可愛く描くかに熱中しているのを尻目に、お月様に会いたかった天道虫の話だの、雷様と雲に乗って旅をする少女の話だの、を空想しては、拙い言葉で書き留めていったのでした。 あの頃の私にとって、「物語を書く」ということは歯磨きや食事と変わらないほどに日常そのものであって、そのくせ出来上がったものを誰かに見せるなどということは考えもしなかったのです。それがいまや、滅多に書かないくせに出来上がったものを人に見てもらうことにはあまり抵抗がなくなったのだから、不思議なものです。 *** ……と、ここで終わってしまっているので、肝心の「作り方」については書かず仕舞いだったようです。この時の私にどんな意図があったのかはおぼろげで、確か「これは凄い」と思う作品に出会うと、作者の方の頭の中を覗いてみたくなる、そして一日くらい創作脳を取り替えてみたくなる、という夢想から、現実には覗き見も交換も無理なのだから(当たり前)、それならば手始めに自分の「書き方」を解析してみようか……と考えていた、という程度しか覚えておりません。 それにしても、もしこれが完成していたとして、果たして人目に晒すつもりでいたのか、は謎であります。晒してどうするのか、そもそも晒す覚悟があるのか、という点についても。 ![]() ![]() ![]() ![]() |