英国留学生活

2002年10月11日(金) エイズと少女妊娠と身体障害と。

声が出なくて、ディスカッションが出来ない。

今日は一コマ目が、マーケティング。
マーケティング・セオリーを博物館で取り上げ始めたのは、
ここ20年ほどのことだという。
こういった、アート・マーケティングの話のときに
引き合いに出されるのが、
日本が、高額で購入したゴッホの話だ。
一体、絵の価値とはなんで決まるのか。
バブルの頃に投機目的で購入した絵の多くが、
銀行の金庫に差し押さえられて眠っているというが。

2コマ目は、社会と博物館との関係。
レクチャラーが以前、ノッティンガムの博物館で、
マーケティングを担当していた人なので、
その博物館での一つの特別展を例にあげた。
ノッティンガムはレスターよりもやや北に位置する町で、
ロビン・フッド伝説で有名だ。
それはともかく。ノッティンガム、シェフィールド、マンチェスター、
リバプールなどの都市は北部工業地帯として似たような性質を持つ。
共通の問題として、10代の妊娠・出産があるという。
それにまつわる、展覧会をこの博物館で行ったところ、
タブロイドに叩かれ、地元の政治家からクレームがついて、
博物館と双方が、コメンテーターなどを出し合って、
展覧会の有害性や正当性の講演の応酬をやって、
すごい騒ぎになったらしい。
ちょっと楽しそう。
地元の都市のカラーを左右するということで、
結構政治家も口出ししてくるものなのか。

もう一つは、一枚の写真。
裸の女性の背に、歩き始めたばかりの幼児が手を当てて立っている。
女性は、ほぼ二の腕の付け根から腕が無く、足も極端に短く、
太もものみが非常に太い。
この写真をロンドンの美術館で(どことは言わなかった)
展示された時、モデルの女性は激怒したそうだ。
この作品だけが注意書きと共に、隔絶されて展示されていたから。
その後、別の都市ミュージアムで普通に展示された時、
来館者から、"freak show"のようだと批判された。
彼女は、「私は何が美しく、何が醜いのか、
性とは何かを問い掛けたいのです。私は醜く、性別を持たない。」
と言った。

一枚の版画を見た。
ヴィクトリア時代の女性細密画家、彼女も腕がない。
たっぷりと取られた、レースの襟飾りにペンを縫い付け、
それで絵を描いていたらしい。
彼女は広く(多分ヨーロッパじゅうを)旅行し、多くの博物館に
足を運んだ。女性が「家庭の天使」であるべき時代に。
自分の力で、自由で在り続けた人なんだろうな、と思った。


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