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悪友。 | 2005年05月05日(木) |
本日の実験も上出来な結果を残して終了し、今日はラッキーディだとばかりに喜びながら器具の片付けをしていたポーリャの耳に、どかばたんと乱暴に扉が開かれる音が届いた瞬間、彼は今日という日がアンラッキーディに塗り変わる予感に溜息を吐いた。 「溜息付くと幸せ逃げるよ?」 「テメェのせいだよハル」 「あっそ。それよりさぁ、今日ウチで夕飯食ってけよていうか食え」 恐らくは家で彼の帰宅を待っている細君とその手料理を思い浮かべているだろう、ハーラルは頬の緩みまくった笑顔でポーリャを手招いている。 「ナンデ」 「ちなみにお前が今夜の食事に誘おうとしているリディちゃんは既に俺が誘ったぞははははは」 「……」 「で、どうする?」 にやにやとチェシャ猫のように笑うハーラルの顔をぶん殴りたい衝動を必死に押さえつけながら、不自然この上ない笑顔でポーリャは是と答えた。 その肩をばんばん叩きながら、何が楽しいのか彼はけらけら笑う。 「あーやっぱ面白いわお前。安心しておけ俺のミルシェの料理は世界一だとも」 「のろけ話は要らないっつの。ほら片付けの邪魔だとっとこ出てけ」 軽く蹴り出された足をひょいと身軽に避けながら、ハーラルは軽く首を傾げた。 「別にいいけど、逃げるなよ?」 あほか、とポーリャは毒づいた。 「リディ人質に取られてんのに逃げるわけないだろ」 「別に人質にしてないよ。ポーリャ来ないんなら行かないって言われたからお前連れて拾いに行かないといけないし」 「……」 「別に嘘ついてないからな? 俺は『誘った』だけだし?」 「……。あーもうハイハイ、テメェの世界一の奥さんの料理ちゃんと食ってやるから片付け済むまでは邪魔すんな!」 ハーラルを廊下に追い出し、ばたん、と勢い良く扉を閉める。 片付けを再開しながらふと窓の方に目をやると、にやにや笑う悪友が窓に張り付くようにして彼の一挙一動を眺めていた。 即、カーテンを閉めたのは言うまでもない。 ****** ハーラルとポーリャ。 長髪お題で自己主張されまくって名前を付けたヤツらです。何だかんだで良い友人。 |