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残滓の祈り。 | 2005年11月03日(木) |
あれからよく祈るようになった。 祈るというほど敬虔な行為ではないのだろうけれど、ふと立ち止まって目を閉じて感覚を澄ます。 吹く風のもたらす潮の匂いと、今でもときおり疼く傷跡。 頬を撫でていく冬の陽光の暖かさは、泣きたくなるような懐かしさと愛しさをもたらす。 親愛なる、私の―― ほうと白い息を吐く。 営みは何処までも続いてゆく。 残されたものを忘れてはいけない。 前へ、辿り着けるところへ辿り着くのだ。 名にかけて誓いにかけて。 己が魂の結んだ言霊を破ってはいけない。 ――そしていつしか路の絶えたところに、この光と故郷の海のあることを。 |