昨年の今頃は、Iと毎日のようにチャットをしていた。 メッセはまだ無かったので、某チャットサイトに行って、 IのHNを見つけては声をかけて、話す。 会話は、いつも夜遅くまで続き、私は段々Iに惹かれていった。 Iも「好きだよ」と言ってくれた。
Iに彼女がいることは、初めに聞いている。 でも、「たまにしか会えないし、そんなに仲がいいわけではない」 と言うので、彼女の存在については、あまり気にしていなかった。
6月末にIが「早めの夏休みを取って、1週間出かける」と言った。
毎日忙しい仕事振りを聞いていたから、 長期休暇はIのリフレッシュになるだろう。 寂しいけど、快く送り出した。
1週間後、チャットサイトにIが現れた。 待ち焦がれていた私は、早速声をかける。
「お帰り。旅行、どうだった?」 「楽しかったよ。○○へ行ってきたんだ」 「えー、海外だったの?」 「うん。あとで写真見せてあげるよ」
出かける前、『避暑で山に行ってくる』としか聞いていなかった。 それは日本ではなく、南半球の観光地だった。
「長期でお金かかるから、自炊型の宿泊施設に泊まったんだ」 「自炊…?……ああ、誰かに作ってもらったの?」 「料理得意だから、俺が作ってやったよ」 「すごいね〜」
作ってやった?1人じゃなかったのかな?
「誰かと一緒に出かけたの?」 「……彼女」
ショックだった。
「あまり仲の良くない相手と、1週間も旅行に行く?」 「やっぱり、彼女とはラブラブなんだ。楽しかったって言ってるし」 「なのに、なんで私と毎日チャットしていたの?」 「チャットHまでして「好き」なんて言っていたのに?」 「…ねえ、私ってIにとって何なの?」 散々怒りと悲しみをぶつけ、 最後には、馬鹿な質問をしてしまった。
「そうだなあ…心のオアシス?」 「なみと話をしていると、安らぐんだよ」
Iを癒すだけの道具だったの?私は。
他にもいろいろ理由を挙げていたが、ほとんど目に入らない。 ただ、泣けてしかたなかった。
いつまでもロムし続ける私に、 「そろそろ寝ようか」と、Iが話を終わらせようとした。 「…今度写真見せてね」
本当は、彼女との思い出の場所なんて見たくない。 でも、それしか言葉が浮かばなかった。
すると、Iは自分のメールアドレスを教えてくれた。 「ここにメールして。折り返し写真送るから」
翌日、Iに短い詫びメールを送ると 添付つきのメールが返ってきた。 添付ファイルの名前は「おみやげ」。
青い空をバックにした雪山。勢いのある滝。港の様子。
どれもバランスのいい構図の取れた、 生き生きとした写真ばかり。
怒っていたことも忘れ、素直に感動した感想を送った。 パソコンの壁紙にも使った。
Iは、私に無い部分をたくさん持っていて、 周りにはいないタイプの人。 恋愛感情を抜いたとしても、興味のもてる人だった。
その後、彼女に嫉妬したり、いろいろあるんだけど、 面倒なので、また後日にでも。
今も途切れ途切れだけど、Iとの付き合いは続いている。
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