ゼロの視点
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2002年11月24日(日) "PARLE AVEC ELLE"

 昨日、姑とのディナーを終えて、夫と二人でほっと一休みしたところに、とんでもない連絡が入ってきた。友人のJY(♂30歳)が、スクーターの後ろに彼の友人のE(♀26歳)を乗せて、シャンゼリゼのあたりを土曜日午前3時ごろ走っていたら、事故にあって、とんでもないことになっている、というニュースだった。

 姑が来たりしていたので、電源が長いことオフになっていた夫の携帯に残されていたメッセージだった・・・・。

 慌ててメッセージを残してくれた友人Sに電話して、事情を聞く。しかし情報が交錯していて、よくわからない。JYは大怪我をしたものの命に別状はないが、Eのほうは生死を彷徨っている最中である可能性だけが伝わってきた。

 それぞれ違う病院に運ばれていて、各病院に問い合わせをしてみるものの、Eの方の状態があまりにも重篤なので、病院側が問い合わせ者がはっきりとわからないと、情報は教えられない、とのこと。

 このままいてもしょうがないので、とりあえず就寝(この時点で日曜日の午前3時、事故発生から24時間が経過していた)。

 朝になり、再び友人らと連絡を取り合い、病院の面会がOKになる時間にあわせて、病院へ・・・・・。

 まず、私達はJYの病院へ行った。ギプスでグルグル巻きになりながらも、喋ったりできるJYの姿を見てホッとする。JYはいつものようにふざけたりするものの、一緒にバイク事故にあったEのことを考えると、罪悪感でたまらないというのが、傍目でもよくわかる。

 目撃者の話では、彼はものすごく安全運転をしていて、そこに信号無視の車が突入してきて、あっという間に彼らは吹っ飛ばされたということ。なおかつそのクルマは逃走して、まったく手がかりがつかめていないとのこと。「ひき逃げ」だ。ゆえに、JYの立場は法的には全く罪に問われることはないとしても、とはいえ、現在昏睡状態の友人Eのことを考えると、どうしようもない気持ちになるのは、なんと辛いことだろうと思う。

 YBはバイク青年。ゆえにたとえスクーターであろうと、物凄く丈夫な皮ジャンに、フルフェイスヘルメット、特製の手袋などで重装備していたうえに、巣スポーツマンだったゆえ、無意識のうちに飛ばされながらも、地面に叩きつけられる瞬間に、身体を守ったらしく、数箇所の骨折ですんだらしい。

 一方、Eのほうは、たまたまパーティーで一緒になったJYに帰る方向が同じなので、バイクに乗せてもらっただけのこと。ゆえに、服装もバイク使用でもなく、メルメットも、警察におとがめをもらわない程度の、いわゆるシンボリックなものだったらしい。

JYの病院のあと、Eの病院へ・・・・・・・・・・。

 そこは、集中治療室。面会時間と人数が制限されていたので、しばらく待合室で待機。そして、とうとう順番が回ってきた。中に入り、手を消毒して割烹着のようなものを着せられ、恐る恐る廊下を進む。すべての病室のドアが開いていて、みんな昏睡状態。動いているのは、職員と昏睡状態の患者につけられた機械だけという、ある種異様な世界。

  脳を激しく損傷したEが、ベットの上に横たわっていた・・・、たくさんの管につながれて。病院搬送直後に開頭手術をうけた彼女の顔はかなり浮腫んでいたので、最初、本当にそれがEだとはわからなかったほどだ。

「職員から手などを握って、話し掛けてあげて結構ですよ」

と言われたので、握り返してくる目処が全く現在のところつかない彼女の手を握ってみるが、ひんやりと冷たい。脈拍や、心電図や、脳波が示されているモニターを眺めながら、彼女に喋りかけてみた。喋りかけるといささか数値が上がったようにも思ったが、気のせいなんだろうか?。

 半年前に見た、ペドロ・アルモドバル監督の映画"PARLE AVEC ELLE(原題HABLE CON ELLA※日本未公開?)"を、ふと思い出した。昏睡状態の2人の女性の物語。それぞれに思いを寄せる男性が、いつ蘇るともわからない彼女らに、話し掛けていく映画だ。まさかこ映画の半年後に、自分が昏睡状態の友人に話し掛ける日が来るとは、想像だにしなかったが、事故というのは、本当に、ある日突然誰の身にも降りかかりうるものだと、改めて痛感した・・・・・・・・。

 そして、一瞬のうちに、事故がすべての人生をかえてしまう、ということも・・・・・。
 


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