ゼロの視点
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2002年11月27日(水) |
カップル達の逸話 PART2 |
1998年から付き合っていたカップルの話。
当時、彼女S26歳、彼Mは66歳という、年齢差がかなりあるカップル。彼Mのほうは、名前に"de"がつく、貴族階級の出身。家系図をさかのぼっていくとアンリ何世だかは忘れたが、そういった著名人にぶち当たるらしい。とはいえ、彼Mの風貌は、1km離れたところからみても、巨大なる浮浪者、もしくは狂人スレスレの怪しい芸術家ってな感じだった。
それにたいして彼女Sは、それはそれは美しい。おまけに頭の回転もよくて、話して楽しく、見て美しいという、すべてが揃っているような女性。ゆえにこんな二人をみて、わしら夫婦は、よく「美女と野獣」とからかっていた。
彼は、パリの南西にある郊外の一軒家で暮らしていた。大きな家の中は、何十年も捨てられぬままとってある古雑誌、ガラクタでグチャグチャ。サロンと呼ばれるところには、ピアノや、ボロボロのソファーがあり、時にそこに音楽家を招聘して、ホームコンサートなどを開催していた。わしらも数度招待されたことがあり、出向いたのだが、ガラクタに囲まれてのクラシック音楽のコンサートは、なかなかシュールだった。
招待客の中には、大使館員や、著名なアーティストなども混ざっていたが、彼らもみんなガラクタに埋まり、半分壊れかかったようなアンティーク椅子に全体重をかけずに、恐る恐る座りつつ、音楽を聴いている(笑)。パンストなどを穿いていたら、間違いなくデンセンしそうな椅子もたくさんあった。バランスをとる為に、近くにあるガラクタに手を置かざるを得ないのだが、同然それらは埃だらけ。ということで、“手が異様に汚くなるコンサート”だったともいえる。
コンサートのあとは、アペリティフやバイキングスタイルのディナーが始まる。だんだんと日が暮れてきて、ちょっと照明が欲しい時刻になってきた。すると彼女のSがたくさんの蝋燭をサロン等に持ってきて、一生懸命点火している。フランス人は間接照明が好きだというのは知っているが、それにしても蝋燭だけじゃ、どうも暗い。なので、ちょっと電気をつけてみないか?と提案してみると、彼女Sが、「Mの家には、電気が通ってないのよ(笑)」と衝撃的な返事!!。
あまりにも暗くて、料理の色合いがわからない・・・。ふと私は第二次世界大戦中などは、こうだったんだろうか?!?!?!、などと思いをめぐらした。
とにもかくにも、色々な意味で常人とは完璧にかけ離れていて、エキセントリックだったM。そんな彼の唯一無二の性格に惹かれていたSだったが、やはり相当、彼との日常生活には悩まされていた。ある日、とうとう彼Mとの生活に嫌気がさした彼女Sが別れを切り出した。
別れたあとのSは、自分と同年代の男性と付き合いだした。しかし彼女Sにまだ未練のあるMは、毎日彼女のあとを尾行し、逐一彼女の行動をチェックしていた。
そして、ある日・・・・・・。
元彼女Sが自分の家で、新しい彼とロマンティックな夜を過ごしていると玄関のチャイムが鳴った。新しい彼がドアを開けると、そこにはMがいた。そして言葉をかける間もなく、Mはポケットからナイフを取り出し、Sの新しい彼を刺しまくった。合計14箇所。家の中は血まみれ。
しかし、14箇所刺したMだったが、その14箇所すべてが急所が外れていたので、殺人犯にはならずに済んだ。不幸中の幸いだ。
刑務所から出所したMは、その後、元彼女が住んでいる地区への出入りを法的に禁じられた。事件後も元彼女のSとは、わしらは交流があるが、今現在Mがどうなっているのかは、誰も知らない。
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