ゼロの視点
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2003年08月09日(土) 肉屋

 自宅の近辺には、昔ながらの肉屋が4件もある。以前パレ・ロワイヤルに住んでいたが、こういった個人商店の少なさに辟易として、現在の場所に住んでいる私たち。

 この4件の肉屋に、必要に応じて通い出して早3年。気がついたら、豚バラ肉はこの店、牛のレバーはこっちの店等という暗黙の習慣が出来ていた。特に最近立て続けに豚のバラ肉を買っていた肉屋では、以前は在庫が少なかったのに、私のせいか否かは知らないが、急激に在庫が増えていたのにビックリ。

 最低でも一キロ単位で豚のバラ肉を買いだめして、さっさとタレに漬け込んで焼き豚を作りおきするためだったのだ。冷やして食べてもいいし、インスタントラーメンを作って、それにこれをのせてチャーシューメンにもなるから、本当に便利。また、そのまま一切れスナック代わりにも食せる。

 さて、現在バカンス真っ最中のフランスでは、この4件のうち2件の肉屋が8月の終わりまで完全休業。久しぶりに、我が家から一番遠い肉屋へ足を運んでみた。この店は、1943年生まれのFが一人で切り盛りしている。なんで私が彼の生年月日を知っているかって?!?!?!。そりゃ、質問したから(笑)。

 彼は、ステーキハッシェ(牛肉のひき肉をハンバーグ状態に固めたもの)を作るにしても、その一つ一つを、たった一つしかない型に入れて手づくりしている。ゆえに、顧客一人に対して、長い時間がかかるのだが、不思議に彼の仕事を見ていると、面白くなって時間が経つのを忘れてしまうことがしばしば。

 顧客のニーズに応えて、オーブンにいれる直前までの作業、例えば一羽の鳥に詰め物をしたり、ハムを作りたい顧客のために、色々とその下準備をしたり・・・、と、この店に出向くたびに、フランス式の肉料理の下準備の見学が出来てしまうのだ。

 一時期、バイトを雇っていたが、それも再び消え去り、再びたったひとりで常連の客相手に、休む暇なく働いている彼。こういう人を見ていると、だんだん意味不明の罪悪感に駆られると同時に、畏敬の念が生じてくる。焼き豚要に肉の塊に紐を結ぶ作業にしても、ものすごく丁寧。とはいえ、どこか身体が悪くなってきているのか、たまにものすごく大変そうに作業していたりもする。

 こういうのを見てしまうと、ああ、いつかこの店がなくなってしまったら、本当に哀しいなあ・・・・、と、まだ彼が生きて一生懸命働いているのに、こんなことを想像してしまう矛盾。

 ま、日本もそうだが、年々個人商店というのが減少してきているのはパリも同じ。確かに、私も巨大なスーパーも大好きなのだが・・・・。とはいえ、こういった店がなくなってしまったあとの買い物を想像すると、本当に哀しくなってくる。待ち時間に見ず知らずの客同士で喋ったり、または喋るのも面倒くさいゆえただ他の人が喋ってるのを聞いていたり、店主の包丁さばきに魅入ったり、自分のニーズに応えて肉をあつらえてもらったり・・・・。そしてあまりに待ち時間が長くなると、客を飽きさせないように色々なハムの試食をさせてくれたり。

 本当に楽しいのだっ!!。こういったことは、スーパーではなかなか体験できないのが現状。今、休み中の、もうひとつの肉屋は、親子3代で切り盛りしていて、これもまた面白い。じいさんの働きブリを見ていると、まるで1940年代にタイムスリップしたような錯覚を覚えるほど。または、昔観た、古いフランス映画そのまま、といった感じ。

 また、別の肉屋は、馬肉販売のライセンスを持っているゆえ、気分転換にウマを食ってしまっている私。

 とにかく、こうやって朝から晩まで(毎朝の仕入れを含めて)働く人を見ていると、昔幼き頃見ていたNHKの“働くおじさん”を思い出してしょうがないゼロでした。


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