ゼロの視点
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2003年11月08日(土) オープンマインド

友人夫妻、夫M82歳、妻J78歳。Mはフランスの国鉄にノンキャリアで入社して、その後たたき上げで幹部になり、現在退職生活。妻Jは、ずうっと専業主婦として、家事と子育てに専念して現在にいたる。

 さて、この夫Mは、西洋文化にほとほと嫌気がさして、信じられない程の東洋かぶれ。毎日朝鮮人参ドリンクを飲み、中国鍼灸を長年学び、チェスをやるかわりに囲碁をたしなみ、そして、異常なほどの“なんちゃって”精神世界の支持者。

 私はMのことが大好きだけれど、彼の東洋に対する考え方には、思いっきり疑問を常に抱かずにいられない。ドグマでガチガチになっている西洋社会にアレルギーを感じるところまでは理解できるが、だからといって、東洋におおげさなほど神秘という憧れを持ち、またそれをエスカレートさせて、しまいには宇宙人とか、UFOの存在などを話し出す。

 Mは82歳といえど、決してボケているわけではない。でも、あまりにも、雑誌『ムー』みたいなことを、なんの説得力もなく彼が話すのを聞いていると、しまいには、東洋と宇宙人を一緒にするとは、何事だっ!!、とついつい突っ込みたくなってくる。

 東洋が大好きといいながら、実は東洋をバカにしてないか?!?!?!、とさへ思ってしまう(笑)。

 先日、Mが自分の思うこと(前述のこと)を論文にして我が家に送ってきた。そしてそれを読んでいて、夫と私は、笑いながらも頭を抱えてしまった。そして、翌日Mから電話がかかってきて、彼の論文についての率直な意見を求められ、なんと感想をのべていいかわからぬわしら・・・・。

 とはいえ、何度もMが率直に感想を述べよっ!!、というので、思わず率直に『ファンタジーとある程度説得力のある論文というのは、違う』と延べると、Mは気分を害して、興奮して色々と彼なりの哲学を電話口で話し出した・・・・・(汗)。



 さて、Mの妻Jは、そんな夫の扱いに慣れている。これが実に笑えるのだ。精神世界だの、SFだの、とかく日常生活という引力からかけ離れたことばかりに熱中する夫に対して、引力真っ只中で今まで生活を切り盛りしてきた妻の視線というのは、本当に冷ややかで、的をついている。

 妻という錨があって、夫が果てしなく遠くに飛べるのか?。それとも、夫があまりにも現実離れしているから、妻が錨となるしかないのか?、それはよくわからないが、この夫婦の会話や行動を見ていると、究極の夫婦漫才のようで笑いが堪えられないのだ。

 ちなみに、この夫婦は一緒になってすでに55年。すごい年月だっ!!。




 私の親友M嬢が『うちの夫は男は対極を見るとか常に言っているけれど、目の前のことはまったく見えてないのよねぇ・・・・。』と半分疲れながらよく言っていたのを思い出す。

 

 一年前、上記の夫妻の家にランチに招待された。到着するや否や、さっそくMが色々、彼なりの理論を熱心に話し出す。しかし、その議論の間に、私はとあることに気付いてしまった・・・・・・。


 Mのズボンのチャックが全開だったのだ・・・・・。さんざん話した挙句、とうとう妻もそれに気がつき、小声で妻が夫にそれを示唆して、Mが慌てて社会の窓を閉めているところを見てしまった、私・・・・。


 さて、その一年後の現在、彼の力作の論文に対して、彼が思うような感想を私達から得られなかったあと、Mは『現代の社会は、狭量だ。ぼくはあらゆることにオープンな精神が存在する社会を築きたいっ!!』とご立腹。




 Mとの電話の後、ふと夫に

『確かにある意味、Mは"l'esprit ouvert"(オープンマインド)とも言えるけれど、 "Sa braguette ouverte"(彼のズボンのチャックもオープンよね)』

と言うと、夫が飲みかけの紅茶を噴きだした。


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