ゼロの視点
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2003年11月11日(火) 長いみちのり

11月8日の日記に書いた結婚して55年という夫婦M&Jにランチに招かれているので、でかける。

 M&Jはパリ郊外に住んでいるので、私達と一緒に招かれている夫婦、夫E(41歳)とその妻P(39歳)そして、かれらの二番目の娘MN(9歳)が、クルマで我が家の近くまで迎えに来てくれ、そこへ同乗して一路M&J夫妻宅へ。

 夫はよくEにクルマで自宅まで送ってもらうということがあるのだが、そのたびに、「何度同じルートを走っても、その次には必ず迷う」と私に語るように、相当な方向音痴らしい・・・・・、ということは知っていた。

 が、実際は?!?!?!、と思い、奇妙な好奇心を隠しつつ、彼らのクルマの後部座席におとなしく座っていた私。コンコルド広場までは問題なくやってくることは出来たが、それ以後雲行きが怪しくなってきた。おお、もしかしてEの本領発揮か?!?!?!、とワクワクする。

 シャンゼリゼ通りから凱旋門の渋滞を避けるという名目で、違うルートを選んだE。エッフェル塔の前を通り、パリ日本文化会館の前を通り、ラジオプランスの横の道に入ったが最後、延々と16区内を彷徨うE。

 好天に恵まれた晩秋の高級住宅街の街並みはキレイだわ・・・・、と車窓からそれらをあえて楽しんでみたが、それでも、私達はまだ16区。ふと、凱旋門が再び見えてきたときには、もう笑うしかなかった。

 それに対して、同じく後部座席に座っているEの妻とその娘MNは、Eが毎度のことのように道に迷うのに辟易としているようで、表情が疲れている。そんな彼女らの表情をバックミラーで見てしまったEはますます焦る・・・・。

 焦った彼は、とうとう抜け道と信じて多くのクルマが進む道へ突っ込んだE。が、残念なことに、実はサーカスを観にきた観客のパーキング待ち、という列でしかなかった。もう引き返すことも、進むこともできない袋小路。

 ますます焦るEは、「どうして進まないんだっ!!」とばかり繰り返す。そしてとうとうオウムのように同じことをくりかえすEにキレた妻Pが、後部座席から「この道はパーキング待ちの人しかいないのよっ!!、そんなところにやってきて、進まないなんてイライラしているあなたのほうがよっぽどどうかしているわっ!!」と叫ぶ・・・・・・。

 チラッと娘MNの表情をみると、シラッとしている。ああ、本当にウンザリしているのね、この娘・・・・・。



 結局、私達は2時間近くクルマの中で過ごし、ようやくM&Jの家に到着したのは午後2時半すぎ。ヨレヨレと全員がクルマを降り、ホッとしながらアペリティフを始めると、娘MNがふとパパEの耳元で囁く・・・・・。


「ねえ、パパ。これから長いランチなのよね。そしてその後、ゼロ夫婦を自宅まで送るのよね・・・・。そしてその後、またパパは迷うと思うのよ、私。今日中に、私達は家に帰ることができるのかしら・・・・?」

 私が、MNの囁きを聞きつけて、爆笑してしまったのは言うまでもない。


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