ゼロの視点
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2009年05月07日(木) TPOをわきまえる

 友人の北京出身の中国人女性J(46)のフランス語は、すばらしい。で、何が素晴らしいか?、といえば、ほとんど中国人としてのアクセント、つまりは訛りがないこと。おまけに、ほとんど文法的にも間違えることがない彼女は、私がパリで生活するようになってからの、語学習得の目標みたいな存在でもあった。

 私がパリに住み始めた頃、彼女はすでに在仏10年といったところだった。で、私が今、在仏暦がようやく11年になろうとしているところ。さて、Jと、久しぶりに中華料理屋でランチしていた時のこと。私からすれば、フランス語がペラペラになってからの彼女しか知らないわけだが、そんな彼女でも色々と昔は苦労していたということがわかった(←ま、当たり前なのだが・・・)。

 今から20年も前のこと。学生としてパリにやってきた彼女は、闇で中国から来る旅行者などのバスガイドなどをやって小遣いかせぎをしていたとのこと。来る日も来る日も、一緒に会話するのはバスの運転手。中国人相手には、母国語で仕事しながらも、非常に気さくなバスの運転手連中に、必死にフランス語で会話しながらも、根気よく相手にしてもらっていたらしい。

 そして数年後、気がついたら自然にJの口からフランス語が流暢に出るようになった時、彼女は、中国人の文化人やアジアに関係する仕事をする、フランス文化人などの集まりに出席する機会が巡ってきた。出会う人、出会う人、彼女の持ち前の明るく社交的な性格をもって、フランス語で交流し、この世の春とばかりに気分がよかったJのところに、とあるフランス人がやってきて次のように言い放ったそうだ。

 『君は本当にフランス語が流暢だが、それにしても、なんだかトラックの運ちゃんみたいな話し方をするのはなんでだ?』と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 不意をつかれたJは、すかさず『運転手は運転手でも、トラックじゃなくてバスなんですが♪、それが?』と答えたとのこと。のちに、こう率直に突っ込んできたフランス人Pと彼女は、親友になっているのだが、とはいえ、Pは『とりあえず、もうちょっと違う話し方をしたらどうだ?』と、Jに注意したそうだ。

 ま、確かに運転手のように話そうがそれはそれでいいのだろうが、とはいえ、その場に応じた話し方というのは、どの国にもあるわけで、そうやってハッキリ、Pに指摘するまで、Jは気がつくことなく、小柄でパンダのような可愛らしい顔しながら、運ちゃん連中のなんともオトコ臭く、独特な単語や表現方法で皆とコミュニケーションしていたわけだ。

 この話を聞いた時、あまりにもおかしくて、食べていたご飯を噴出しそうになった私。が、人のことは笑っていられない。私も結局、運ちゃんではないが、基本として毎日耳にしているフランス語が夫、つまりはオトコの言葉であるゆえに、時と場合によっては妙にがさつというか、下品にもなりかねないことがある。

 と、同時に、日本人女性と一緒に、日本に住んでいる、一見日本語がペラペラなフランス人男性、もしくはあらゆる外国人男性の多くが、女性の話し方を基本に日本語を学んできているため、ものすごく胸板もあつく、胸毛ボーボー、長身で、顎が割れたような、野獣のような西洋人でも、話し出したとたんに、オカマのようだったりすることが多々あるのを思い出した。

 知人夫婦のフランス人夫は、ちょっと見がジョニー・アリデー風。ジョニー・アリデー風というだけで、もうプッと冷笑したくなってしまうのだが、そんな見かけの彼が、可憐な乙女のような日本語を話すから、もう笑いが止まらない。相手に失礼なので、笑わないようにするのだが、葬式などで笑わないように意識すればするほど、笑い出してしまうような感じで、彼の話をなかなかまともに聞くことができないのが申し訳ないのだが・・・。

 ま、これからも引き続き、一極集中ではなく、できるだけ多くの人にあい、できるだけ多種多様の階層の人と触れ合うことで、言葉のバリエーションを増やせていけたらと思う昨今である。とはいえ・・・・・・言うが易し、行なうは難し(汗)。



              こんな姿カタチで、乙女チックな話し方♪


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