KENの日記
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2001年03月02日(金) ハフナーセレナーデ

東京芸術劇場でモーツアルトの「ハフナーセレナーデ」KV250を聞いてきました。演奏はアマデウス・アンサンブル東京。朝枝信彦氏をコンサートマスターとして、N響トップ奏者ら内外の演奏家で構成する実力派です。

弦楽5部はどんな早いパッセージも全員そろってバリバリ弾けるすごいメンバーが揃っていて、それに管楽器がとても柔らかい音で溶け込みます。今日はロンドンフィル主席チェロのロバート・トルーマンさんが加わりました。曲の合間に中村メイコさんの語りでモーツアルトの手紙の紹介がなされました。個人的に最近吉田秀和氏の「モーツアルトの手紙」を読んだところなので語りも面白く聞くことだできました。

モーツアルトはものすごい量の手紙を残しているのです。現代の私たちはそれらから、当時の楽壇の状況、モーツアルトがどのような気持ちで作曲していたか、著作権のない当時作曲家は非常に苦しい境遇にあったこと等々多くの情報を得ることができます。その中でもっとも心を打つものは、モーツアルト一家の緊密関係でしょう。

モーツアルトは父、母、姉に率直で非常に心温まる手紙を書いています。ひとつの例。モーツアルトが母親と二人でパリにきているときに、旅先で母親が亡くなってしまいます。それをザルツブルグの父親に知らせるにあたり、父親への衝撃の大きさ考え、モーツアルトは最初に「母の病気が重い」という手紙を書いて最悪の状況になったときの心構えをさせるという気配りをするのです。電話・電報のない時代はたいへんだったと思います。

モーツアルトの内面を語るナレーションの内容と演奏曲目の「ハフナーセレナーデ」が直接関係ないので唐突な感じは否めませんでした。モーツアルトの人生紹介を中心に据えるのであれば曲目は名曲抜粋でもよかったのではないでしょうか。

「ハフナーセレナーデ」は1776年モーツアルトが20歳の時にザルツブルク市長ジークムント・ハフナーの娘エリザベートの結婚式前夜(7月21日)のために作曲されたものです。全曲で1時間程度の長い曲で華やかなものですが、モーツアルトの晩年の雰囲気をちらほら聞くことができます。晩年といっても20歳のモーツアルトにはあと15年間しか残されていなかったのです。独奏バイオリンの均一で美しい音とそれを支えるバックが確実でとても柔らかい音が印象的でした。トランペットが二本入っているのですが終始柔らかい音でいい味付けをしていました。

指揮者を置いていないので、遅い楽章でテンポの揺れるところはすこし不安定だったかなと思いました。会場は満員でしたが、聴衆がすこし堅かったせいかそれを気にしてコンサートマスターがオーバーアクションになっていたのではないかとおもいます。主催は「ビックカメラグループ」で、三宅島被災者支援のチャリティコンサートでした。




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