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2003年01月27日(月) 桜花 |
仕事終わりに、一足早くさくらのアイスをいただく。 うちのバイト先(居酒屋)では春になるとデザートフェアが始まる。今日は業者さんがアイスの試供品を持って来てくれた。「食べていいよ」と店長。 半透明の丸いパックに入ったピンク色。買い足したばかりの、ピカピカのデザートスプーンで掬って一口。まぁ、桜餅みたいな味。ちょっともちもちして、葉っぱの塩気が香って、甘さを引き立てる。ふわ、ふわ。 懐かしい味。疲れた頭で去年のことを思い出す、つもりで頑張ってみたけど、浮かんできたのはデザートフェアのチラシと、前の店長と、お皿に盛られたこのアイスだけだった。店の中は、夏は厨房が熱かったり冬は水が冷たかったりする以外、そう大差ない。変わるのは、毎日の客と、私たち店員。 今年の春、このアイスを売り出す頃にはもう私はここにいないのだなぁ、とぼんやり。2年間この変化のない光の中で過ごしてきた。たくさんの人たちと。いなくなった人も、ずっと同じ時を共にした人も。私はずっとここにいた。私は何か変わったのだろうか。特に思い当たることは、ない。 出て行くときくらいは。春に散る花の如く、人を惹きつけ、足元を桜色に染められたら。ふわ、ふわ、ふわ。マタアウヒマデ。 |
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