さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月14日(木) |
にゃん氏物語 帚木07 |
光にゃん氏訳 源氏物語 帚木07
『私が情人にした女は つなぎ程度で 長い関係になろうと思わなかった のですが馴れるとよいところが見えて心がひかれていきました たまにしか行かないが 彼女も私を信頼するようになった 愛していれば 恨むこともあろうが 気がとがめる時でも何も追求しない 久しぶりに行っても いつも行くように扱ってくれるので気の毒で将来のこと について色々約束した 父親がいなく私だけが頼りな様子で可憐な人でした
私は後で聞いたことだが 私の妻の家の方から知人を介して 彼女に酷い事を言った しかし彼女はおとなしいので 酷い事があったと 知りながら手紙も書かず行きもしないでいると 私との間に子供もいましたから精神的に苦しんだあげくに 撫子の花を使いに持たせてよこしました』中将は涙ぐむ 「どんな手紙?」と源氏 『なに 平凡なもの
『山がつの垣は荒るともをりをりに哀れはかけよ撫子の露』 (山中の粗末な家の垣根は荒れても(私にはかまわなくても) 何かの折には垣根に咲く撫子の花(子供に)情愛の露を注いでください) それで行ってみると いつものとおりおとなしいけど 少し物思いの顔をして 秋の荒れた庭をながめ 虫の声と同じように力ない様子が 小説のようでした 『咲きまじる花は何れとわかねどもなほ常夏にしくものぞなき』 (常夏の撫子には及ぶものはない)まず子供より彼女の機嫌を取る
彼女は『打ち払ふ袖も露けき常夏に嵐吹き添う秋も来にけり』 (雑草を取り払う袖も 涙で泣き濡れて露っぽい 常夏の撫子に嵐がわびしさも添えて吹く 秋が来てしまいました) とはかなそうに言うが 私を恨む様子もなく うっかり涙をこぼしても 恥ずかしそうに紛らわせてしまうのです 恨めしい理由を自ら考えないので 私は安心して帰って来ました そして しばらく行かないうちに いなくなってしまった まだ生きていれば相当に苦労をしているでしょう 子供もかわいい子でしたから 探し出したいが手がかりがありません
これは さっきの話では たよりない方にあたるでしょう 素知らぬ顔をして恨めしく思っていたのに 気付かず愛していたのは 一種の片想い 彼女は男に永遠の愛を求める態度を取らないので確かに 完全な妻にはなれません
佐馬頭の嫉妬深い女も想い出としてはいいでしょうが 今一緒ならばたまらない そのうち嫌になるでしょう 琴の上手な才女も浮気の罪があります 私の話の女も本心を見せられない点に欠点があります 女に限らず何でもそうですが 良い所だけ取れば どこにでもいる 吉祥天女(美女のたとえ)を恋人にしようとすれば 仏法くさくなって困るだろう』中将がこう言うと皆笑った
『式部の所には面白い話があるだろう?』中将が聞いた
さくら猫にゃん
今日のはどう?
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