さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月13日(水) にゃん氏物語 帚木06

光にゃん氏訳 源氏物語 帚木06

『その時分に もう一人情人がいまして 身分は少しいいし 才女らしくて
歌や手紙を書くことや音楽も達者でした 容貌も感じが悪くないので
やきもち焼きは世話女房としておき そこへ通って行ってた頃は
楽しかったです 女が亡くなって しばしば通うようになると きどって
風流女を主張するのが気に入らなくて 一生の妻にする気がなくなりました
十一月ごろのよい月の晩 御所からの帰り ある殿上役人と車に同席しました
その人が今夜待ってる人がいるから寄って行くと言い 私の女もその辺なので
たまには寄って行こうと一緒に車を降りました そしてその男が入った家は
私の女の家なのです 

約束していたらしく男は夢中で 部屋の縁側に腰を掛け気取った風に
月を見上げている 白菊が紫色がかった庭に 紅葉がたくさん降ってくるので
酔いしれるのも無理はない 男は笛を吹きながら合間に
「飛鳥井に宿りはすべし蔭もよし」物陰もいい など歌うといい音の大和琴を
弾いて合わせる 男は面白がり琴を弾く前に行って「紅葉の積もり方を見ると
誰もきていない 貴方の恋人は冷たい人ですね」と 嫌がらせを言います
菊を折って行き

「琴の音も菊もえならぬ宿ながらつれなき人を引きやとめける」
(琴も菊も素晴らしいが 恋人はつれなく無関心で…)
「恋人がきたら うんと弾いてあげなさい」嫌みを言うと女は作り声でふざけ
「こがらしに吹きあはすめる笛の音を引きとどむべき言の葉ぞなき」
(木枯らしに吹き合わせる貴方の笛の音を
             引きとどめる言葉も上手な琴場もありません)
私が覗いて憎らしがってるのも知らず 女は十三弦を派手に弾き出しました
才女だけど きざな感じがしました

遊戯的な恋愛をしている時は 面白おかしく交際してそれでいいのですが
時々通う愛人がこれでは面白くないと思い その晩のことを口実に別れました
この二人を比べると 若い時でさえ後の風流女のほうは信頼できないと思った
これからは 私はさらにそう思うでしょう 

いたいたしい萩の露や 落ちそうな笹の上の霰などにたとえるような
艶な恋人がいいというふうに 貴方達は思うだろうが 
私の歳になれば よくわかりますよ 風流好みな多情な女は気をつけなさい 
三角関係が発覚したとき嫉妬問題を起すよ』
佐馬頭は二人の貴公子に忠言した 中将はいつも通り頷く
少しほほえんだ源氏も佐馬頭の言うことが正しそうだと思うらしい
あるいは 二つとも ばかばかしい話と笑っていたのかもしれない

「私も ばか話を一つしよう」中将が前置きをして語り出した


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