さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2002年11月16日(土) にゃん氏物語 帚木09

光にゃん氏訳 源氏物語 帚木09

やっと天気が晴れた 源氏はこんな風に宮中ばかりいることも左大臣家の
人に気の毒だと思って帰った 
一糸の乱れもみえぬ家柄であるから昨夜の談話者達には気に入るだろう
そう思いながら行儀をくずさぬ打ち解けぬ夫人の事を物足りず 中納言の君
中務(なかつかさ)などの若い女房達と冗談をいうのが楽しみだった
季節は暑苦しい五月雨 彼女達も暑さで部屋着だけの源氏にうっとりしてた

今夜は内裏から二条の院は中神のいる方塞がりで家従の紀伊守の所に泊まる
中神:陰陽道で八方を巡り吉凶禍福を司る神 己酉の日から東西南北に五日
北東 南東 南西 北西に六日ずつ計四十四日間地上で十六日間天上に戻る

庭に通した水の流れなどが地方官級の家としては凝ったものである 
わざと田舎の家風の柴垣があったりして 庭の植え込みもよくできていた
涼しい風が吹き どこからともなく虫が鳴き 蛍がたくさん飛んでいた
源氏の従者達は渡り廊下の下をくぐって出て来る水の流れに面して酒を飲む

一人で源氏は 前夜の人達が階級を三つに分けた中流であろうと話を思い出す
思いあがった娘と評判の伊予守の娘は紀伊守の妹で 初めから源氏はそれに
興味を持ち 聞き耳を立てていた ある部屋で女達の衣擦れが聞え 若々しく
艶めかしい声だが ひそひそ話をしているのに気付く わざとらしくも感じた
紀伊守が不用意と叱って皆戸がおろされたので室の火影(灯火の光)が
ふすまの隙間から赤くさしていた 低いさざめきは源氏が話題らしい
「早く結婚したから寂しいねえ でも隠れて通う所があるんですって」
源氏ははっとした 自分のあってはならぬ禁断の恋を知って言われていたら
どうだろうと思ったから でも話は普通の事ばかりで全部聞く気はしなかった
式部卿の宮の姫君に朝顔を贈った時の歌などを誰かが得意そうに語っていた

紀伊守は縁側でかしこまっていた 源氏は縁に近い寝床で横になっていた
随行者も寝たようである 紀伊守は愛らしい子供がたくさんいた 
御所の侍童を勤めて知った顔もある 縁側を往来する中には伊予守の子もいた
特別に上品な十二・三の子もいる 源氏はどれが子で どれが弟か尋ねていた
「ただ今通りましたのが亡くなった衛門督の末息子で姉の縁で私の家にいます
将来のため御所の侍童を勤めさせたいが姉の手だけでは難しいのでしょう」
『あの子の姉さんが君の継母になるんだ…不釣合いなお母さんを持ったもの
陛下も 宮仕えにと衛門守が申していた娘はどうなっただろうと いつか
お言葉があった 人生はわからないものだ』源氏が大人ぶった口調で言った


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