さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年01月17日(金) にゃん氏物語 末摘花06

光にゃん氏訳 源氏物語 末摘花06

あきれるほど内気で引っ込み思案の女王様は手紙の源氏の言葉に
触れてみようともしなかった 命婦はそんなに源氏が望むなら物越しに
逢わせてみよう 気に入らなければそれきりだし 縁があって通う事に
なっても宮家では誰も咎めないだろうと思った 恋愛を軽く考えていて
女王の兄でもある自分の父にも話しておこうとはしなかった

八月二十日過ぎ月の出は遅く 夜になってもまだ月は出ないで星だけ
白く光っている 古い邸の松風が心細い 昔の事を話し出して女王は
命婦と一緒にいて泣いていた 源氏に訪ねてこさせるのによい機会だ
そう思う命婦の知らせが届いたように源氏はこっそりお忍びで来ていた

そのころようやく月が出てきた その月の光が古い庭を いっそう荒れ
果てて見せ 寂しい気持ちで女王は眺めている 命婦が琴を勧めた
弾くのを聴くと悪くはない もう少し今風の感じを取り入れたらいいなと
密かに企ててみて 性格からでしょう じれったく命婦は思った

人があまりいない家だったので源氏は気楽に中に入り命婦を呼ばせる
命婦は今はじめて知って驚くように見せた
「いらしたお客様は源氏の君ですって いつも交際する紹介役にと
うるさく言われ 私には駄目ですと断っています それなら自分で直接に
話しをしに行くと言うのです 帰す事はできないです 失礼な方なら
ともかく そんな方ではないし 物越しに話しをするのを許しましょう」
と言うと女王はとても恥ずかしがり「私は話しの仕方も知らないのに」
と言い部屋の奥にひざをついてにじり入るのが初々しい

命婦は笑いながら「あまりにも子供らしいのはちょっとね
貴婦人といって 親が十分に扱ってくれるうちは子供らしくていいけど
こんな心細い暮らしをしていながら 貴方のように恥ずかしがるのは
まちがっています」と忠告した 人にそむけない内気な性格の女王は
「返事をしないで聞くだけなら格子を下ろし ここにいていい」と言う
「縁側に座らせる事は失礼です変な事はしないでしょう」と上手く言い
部屋の間の襖を命婦が閉めて 隣室に源氏の座の用意をした

源氏は少し恥ずかしかった 初めて逢うのにどんなことを言えばいいか
解からないが 命婦がなんとかしてくれるだろうと思って座った
乳母などの役目の老女たちは部屋に入り夢心地の目を閉じている頃で
若い二人三人の女房は有名な源氏の君が来たのに心をときめかす
よい服に着替えさせながら女王は何の心の動揺もなさそうであった


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