![]() |
ある異国の港町で。 - 2002年11月24日(日) 出発までの短い時間 私たちはこの良く知らない街を 散策することにした。 ここを訪れるのは2度目だという彼は まるでその地図を 把握しているかのように 方向感覚と朧げな記憶で 戸惑うことなく路地を進んでいく。 早朝の街はとても涼しかった。 その街は 平日の朝を迎え 仕事に向かう人たちが それなりに気忙に 足をすすめていた。 陽の眩しさは尋常ではない。 築後数十年はたとうかというクラシカルな アパルトマンの間から漏れる朝の光に目を細めた。 港町だった。 海際には それを取り巻くように 一本の大きな道路が走り その道路から少し引っ込んだところに 商店が並んでいた。 ショーウインドウには カラフルな食器や鍋掴みやエプロンが並び いかにも陽の降り注ぐ ヨーロッパの港町の気配を 漂わせていた。 石畳の道を ちょっと踵の高いストレッチブーツでは 足取りもおぼつかない。 眩しい光の降り注ぐその通りは まだ静かに静まっていたけれど もうしばらくすればそこも 賑わいをみせる気配を 開店準備をするために鍵を開けにきた男性の後ろ姿に読み取れた。 広い道路のぐるりと円をえがくその分離帯に まだ固く緑色の檸檬がなっていた。 手を伸ばし ひとつ手に入れようかとしたけれど 出発時間を気にして 足を早めはじめた彼に急かされ その手を 引っ込めた。 まだ はじまったばかりだった。 旅行も 何もかもが まだ はじまったばかりだった。 ...
|
![]() |
![]() |