流れる水の中に...雨音

 

 

いつかきみに。 - 2003年01月20日(月)



冷たく固い石で覆われた 高い塔で暮らしている。
中は薄暗く 閉塞された空間が 空気の流れをも
殺してしまっている。
外に吹く風も ざわめきも 光をも遮られ
どれほどの厚みがあるのであろう石壁のこちら側と
あちら側では きっと 時代すら異なるのではないのかと
そう 感じてしまうほどの。

この 淀んだ しかしながら澄んだ空気を留めるこの塔の中には
体を温めるには十分な松明の明りが盛んに燃やされ
そして 柔らかな足元の敷物とともに
十分なだけの美味しい食べ物も不自由せずに。

この重厚な空間の中には 生を満たすための
あらゆるものが存在し あらゆるものが与えられ
そして退屈をしのぐための余興や書物 そして
幾人かの話し相手もいるけれど。

けれど
重い鉄の窓を開いて
窓からみえる遠い景色に心を魅かれてしまう。
そこには青く煌めく遠い海が見えたり
春の優しく暖かい柔らかな陽射しが注ぐ景色がみられる。

暗く冷たい塔に開いた小さな窓は
その小ささに反比例するように さらに鮮かさや
生命の漲りを増し
その小さな窓こそが 世界であるかのように
力強く 輝く。

私は その鮮かな景色の中に存在する
青い海の水の冷たさに触れ 春の陽射しを受け
柔らかな春草を この足に踏みしめたいと
焦がれて 窓辺に寄る。

その小さな窓を覆う重い鉄の扉を閉じることができれば
きっと
こちら側に存在するもののひとつひとつに
満たされて穏やかに。

私は私で完結できるのだけれども。



いつかきみに
私にとってのきみとは と尋ねられたら
そう答えようと 思っているんだよ。







...




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