流れる水の中に...雨音

 

 

抜け殻。 - 2003年10月02日(木)


勢い良く 大きな伸びをすると
私の背中にひとすじの亀裂がうまれ
まるでそれは
私を閉じ込める檻であったかのように
突然 新鮮な空気が流れこんだ

私はそこにある空気を
吸ってしまって良いものかどうかと
頭の片隅で考えたけれど
恐怖心もあいまって
息を止めた

私の背中が覗く世界は
私の目が眺める世界とは
色も気配も温度も違っていて

そこには空気とおなじように
新鮮な世界が広がっていて

このまま此処にとどまれないのに
この殻を破り脱ぎ捨てることを恐れて
もう既に殻となってしまったこの檻に
再び戻って知らんぷりを決め込もうとする

今羽を広げなければ
羽はしわくちゃのまま
このまま固まって死んでしまうのに

新しい世界は私の
変化を突き付けてくるから
足を踏み出すことができずに
恐くて此処で震えていた

太陽が背中の亀裂を
閉じてくれたなら
私はこの檻のような殻の中で
死んでしまってもよいと思ったのに
それは ただそこに
じっと在り続けるだけだった

片羽を伸ばして空に突き立ててみたけど
辺りはざわめきすら起こさずに
無気味な程 静かだった

もう片羽を伸ばしてみたら
小さな涼しい風が 羽を揺らし
心地よく私を慰めてくれた

このまま
飛び立ってしまわねばならないことを
知っていた。
此処にはもう抜け殻しかないから
木の葉はもう私を
育んではくれないから

私は 鮮やかな花を求めて
羽を翻した
鱗粉が 辺りを微かに煌めかせた

私はもう
抜け殻のことを忘れてしまった





...




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