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『都市伝説セピア』 朱川湊人 (文藝春秋) - 2005年09月04日(日) 朱川 湊人 / 文藝春秋(2003/09/23) Amazonランキング:21,624位 Amazonおすすめ度: ![]() ![]() ![]() ![]() 『花まんま』で直木賞を受賞された朱川湊人さんの出世作と呼ばれる本作は直木賞の候補にもあがった。 あらためて読み返してみて、本作で直木賞を受賞してもよかったのではないであろうかと感じたのは私だけであろうか。 朱川さんの最も秀でている点はやはりその“語り口”の絶妙さであろう。 朱川さんの場合、ホラーが“ジャンル”ではなくて“題材”だといえそうだ。 ジャンルとしては“郷愁&人情小説”いや“大人のおとぎ話”といった言葉の方が適切であろうか。 だから恐いという先入観を持たれて避けられてる方は是非勇気を出して本作を手にとって欲しいなと思うのである。 全5編からなる短編集であるが個人的には切ない話である「昨日公園」と「月の石」が良かった。 少し背筋がゾクッとなるが哀愁感に満ちた作品のオンパレード。 たとえば個人的にベストだと思う「昨日公園」。 幼い頃、友達と公園でキャッチボールしたシチュエーションが読者の脳裏を横切るだろう。 彼らは今、どうしているのであろうか。 ふと自分の幼少の頃の懐かしい思い出に馳せる。 そういう気持ちを思い起こさせてくれただけでも一読の価値はあると断言したい。 タバコを吸われる方、本数を減らしましょう(笑) 「月の石」の“ほのぼのエンディング”も読者にとっては嬉しい。 読者が自分の人生を見つめなおすきっかけとなる作品だと言えそうだ。 見事な起承転結で描かれた作品で、読者に日頃忘れがちな勇気と自信を取り戻させてくれるのである。 短編集全体の構成面を考慮しても、内容的な面において、この作品をラストにもってきた点は本作における大いなる成功である。 なぜなら、朱川さんの作品を次も是非読みたいなと思って“優しい気持ち”で本を閉じられた方が大半のはずであるから。 普段ホラーやサスペンスをたくさん読まれてる方には「フクロウ男」がオススメ。 個人的には狂気に満ちた(ちょっと言い過ぎかもしれませんが)「アイスマン」と「死者恋」はいまいちだったような気もするが、この2編は読者を選ぶ作品なのかもしれない。 本作はご存知のように、直木賞受賞作『花まんま』より先に刊行された。 読まれた方はお気づきだと思うが、すでにこの時点で“朱川ワールド”を見事に構築しているのである。 次の朱川ワールドを心待ちにしているファンが全国津々浦々にいる。 朱川さんなら期待に応えてくれるであろう。 評価8点 2005年60冊目 ...
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