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『サウスポー・キラー』 水原秀策 (宝島社) - 2005年11月01日(火)


水原 秀策 / 宝島社(2005/01/27)
Amazonランキング:75,247位
Amazonおすすめ度:
ピッチングも小説も「キレ味」が大事
値段分の価値はある
野球が好きな人でも嫌いな人でも十分楽しめる作品です


<小気味の良い文章が売り物のミステリー界の新星登場!>

このミステリーがすごい!の第3回大賞受賞作品。
舞台はプロ野球であるが、内容的にはあんまり野球ルール等を知らなくても充分に楽しめる。
たとえばプロ野球の全12球団名を言えない人でも安心して手に取って欲しい。

設定的に登場人物や球団等、実在しているもの(あの球団です)を揶揄している部分もあるが、私は阪神ファンなのでことさら楽しめた。

内容的には主人公でオリオールズの2年目サウスポーピッチャー沢村が八百長疑惑に巻き込まれていくのを、疑惑を晴らすために悪戦苦闘する姿が一人称で語られています。
読み終えた結果として、現実的にこのようなことがあったら困るのであるが(笑)、競争社会の厳しさを少しでもわかった読者はハードボイルドミステリーを堪能できたと言えそうだ。

やや、ラスト近くの試合シーンに消化不良的な不満も残るが、主人公沢村のクール度も含めて脇役陣のキャラもたっており、安定して読ませるところはさすがだなと感服した次第である。

水原氏の特徴はやはり人間の奥底に潜む嫉妬や悪意を描きつつもあんまりそれが前面に出ずに爽やかである点だ。
とりわけラストシーンのロマンスの結末や敵役が発する言葉なんかは見事のひと言。
新人ながらにして読者を充分に意識した作品を書けているのである。
野球にゲームセットはあっても、人生にゲームセットはないのであるから・・・
主人公と作者を比べてみよう。
作中の沢村はプロ2年目で確か新人王には選ばれなかったはずである。
このミス大賞というミステリー界の“新人王”を獲得した(と言っていいのであろう)水原氏、小気味の良い文章でエンターテイメント界にさらなる新風をもたらせて欲しい。
次作以降も大いに期待したく思う。

評価8点

2005年66冊目


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