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『雪屋のロッスさん』 いしいしんじ (メディアファクトリー) - 2006年06月09日(金)


いしい しんじ / メディアファクトリー(2006/02)
Amazonランキング:位
Amazonおすすめ度:


<何回も繰り返して読みたいワールドワイドな作品集>

以前、いしいさんの本に挑戦したことがあったのであるが残念ながら挫折した経験がある。
リベンジということで今回手に取ってみたが、この本が読者にもたらしてくれる内容と同様大きな教訓を私に与えてくれた。
それは“物事に先入観を持ってはいけない!”ということである。

雑誌ダ・ヴィンチに連載されていたショートストーリーの単行本化。
収められてるのは全30編。市井の人々の仕事と暮らしを描いている。
まさに大人のファンタジーワールド。
短いものは見開き2ページで長いものでも6ページしかない。

予想に反してすべてがハートウォーミングなものばかりではなく、ところどころに人間の嫌な部分も書いている。
決して人生一筋縄ではいかないのである。
が、根底にあるのは“素朴さと暖かさ”
そこに大いなる魅力を感じる。

本作は本のワールドカップと言うものが存在すれば、日本代表として選ばれてもおかしくないであろう。
海外で翻訳されて多くの人に手に取ってもらいたい作品である。

1編目を読み終えて、決して一気に読むようなたぐいの本ではないとすぐに気づいた。
子供の頃、“一日一善”という言葉を肝に銘じて過ごした経験がある。
まあ、一種の心構えのひとつなんだろうが、この作品集もいつも手元において寝る前に繰り返し読むべき本だと思っている。
一日1編ずつ読むことによって、あたかも一日一善を遂行した気分にさせてくれる魔法のような本である。
こういう本を読みながらまどろむのは読書の醍醐味とも言えそうだ。
そういう意味合いにおいては、比肩する本を探すことは非常に困難な気がするのである。

また、この作品を読んで、幼少時代に寝る前に両親に童話を読んでもらった記憶が甦った方も多いんじゃないだろうかと思う。
現在小さなお子さんがいらっしゃる方なら、今まで以上に何回も繰り返し熱心に読んであげようと思われた方も多いんだろう。
そう、“読書は心を豊かにする”のであるから・・・

個人的には「風呂屋の島田夫妻」の夫婦愛が一番印象的だ。
しかし好きな作品って人生同様十人十色で良い。
私自身も何回も繰り返して読めば変わるであろう。
それぞれの物語のそれぞれの主人公に自分自身の想いを馳せながら読んで欲しい。

どれもが心に残り読者を再生させてくれる本作、1編1編の物語は短いが内容はとってもスパイスが効いて濃いことだけは保証したい。
さあ、あなたもページをめくって下さい。

オススメ(9)

この作品は私が主催している第5回新刊グランプリ!にエントリーしております。
本作を読まれた方、是非お気軽にご投票いただけたら嬉しく思います。
(投票期間2006年8月31日迄)






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