2003年08月18日(月) |
おばちゃん、遅ればせに「朗読者」を黙読 |
新潮社クレスト・ブックスというシリーズがあります。 その名のとおり新潮社から出ている、翻訳もののシリーズですが、 装丁の美しさと惹句のうまさで、 金のない田舎のおばちゃんを立ち読みさせる代物です。 値段が高いので、おばちゃんは2冊しか持っておりません。 図書館で借りて読んだものも何冊かありますが、 おばちゃんは、まだまだたくさん読みたいと思っておりました。
さて、ある日おばちゃんは、駅前でバスに乗ろうとしたら、 バスが来るまで20分あることに気づき、 駅ビルの書店に駆け込んで、文庫を冷やかしました。 そこで、もともと「クレストブックス」から出ていた1冊が 文庫化されて出ていたことに気づきました。 奥付を見ると、最初に出たのは3カ月ほど前のようですが、 たったの3週間ほどで3刷まで出ていました。 その本こそ、「クレストブックス」で最も話題になったであろう1冊、 ベルンハルト・シュリンクの『朗読者』でした。
数十ページだけ読んで、おばちゃんはびっくりしました。 事前にちょっとだけ入ってきていた情報から、 純な少年と、姥桜のような女性が 精神的に強く結び合う話だと思い込んでいたのに、 これ情痴小説かよっと思うほどの 大胆な性描写が繰り広げられていたからです。 が、不思議と劣情に訴えるものではなくて(半分嘘)、 そして何より、続きが非常に気になったので、 どんどん読み進めていきました。
この小説は、3部構成です。
1部は、15歳の主人公ミヒャエル・ベルクと 36歳のハンナという女性の秘められた恋が 香気豊かに繰り広げられていましたが、 ハンナはある日突然、姿を消してしまいます。 そのわけは、2部ですぐ明らかになりました。
その2部ですが、そのストーリーの性質上、 妙に説教臭いというか説明臭いのが気になりましたが、 読後は、ミヒャエルの「几帳面なとっちらかりよう」を 微笑ましく思えたりもして、まんざらでもないと思えました。
そして、3部で一気に感涙にむせぶことになります。 (やっぱり、やや説明臭くはあるのですが)
おばちゃんは、ハンナより1つ年下の35歳で、 ミヒャエルとそんなに変わらない娘が1人います。 だから、努めて感情移入を「しない」ように読んでいました。 それはもちろん、こっぱずかしいからです。
が、2部を読んで、ハンナと自分の置かれた境遇の差を知ると、 感情移入などできるものではないようなシビアさに胸が痛みました。 歴史的大事件の中で、不本意な立場に追い込まれたハンナの苦しみなど、 半分も理解できるわけがありません。 この先も静かにこの本の「黙読者」でいたいものだと思いました。
おばちゃんは映画が大好物です。 これを原作に、映画化の話もあるということをあとがきで知り、 さっそく考えたのが、どんなキャストか?ということでした。 糸色文寸女兼だと思うのは、メリル・ストリープです。 張り切ってやりそうなのが、また痛々しい感じがします。 名乗りを挙げている人の中に、 ジュリエット・ビノシュがいることを ネット検索で知りました。 ……あ、いいかも……と、おばちゃんはあっさり納得しました。 別に彼女のファンというわけではないのですが、 確かにイメージに合うなあと思いました。
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